改訂新版 世界大百科事典 「イザイホー」の意味・わかりやすい解説
イザイホー
沖縄県島尻郡知念村(現,南城市)字久高(くだか)に伝わる祭事。12年に1度午(うま)年の旧11月15日から5日間にわたって行われ,久高島で生まれたナンチュと呼ばれる30歳から41歳までの女性が〈みこ〉としての資格を得て,ノロを頂点とする祭祀集団に加入して神女になる儀式。祭りに先立つ1ヵ月前から祭祀の主宰者であるノロや先輩格のヤジクが,今度初めて祭りに参加するナンチュを率いて島内の聖所を巡拝する〈御願立(おかんだて)〉の行事をすませる。祭りの初日は〈夕神(ゆくねがみ)遊び〉で夕方白衣を着て素足のナンチュたちは先輩の神女たちに先導され,〈エーファイ,エーファイ〉と掛声をかけながら祭場に駆け込み,〈七つ橋〉を渡って〈七つ屋〉で3日間の籠りに入る。2日目は〈朝神(あさがみ)遊び〉または〈髪垂(かしらら)れ遊び〉と称し,籠り屋から洗い髪姿のナンチュたちが祭場に出て来て先輩の神女とともに円陣をえがき,踊りながら神歌をうたう。3日目は〈朱(しゆ)りきー〉または〈花挿(はなさし)遊び〉を行う。ナンチュたちは髪を結い色紙で作ったイザイ花を前髪にさし,庭で祭祀の主導的役割を果たす村の宗家の主(あるじ)の一つの外間根人(ほかまにいちゆ)から額と頰に朱印を押されて神女としての資格を与えられる。4日目は〈アリクヤーの綱引き〉と〈グキマーイ(桶巡り)〉がある。これは,はるか洋上のニライカナイへ神々を送る行事である。5日目は〈シデ果報(がほ)〉と呼び,午前中はノロ以下ナンチュも含めた神女全員が拝所を巡りイザイホーが無事終了したことを報告し,午後は慰労の酒宴を開き,祭りの終了を祝う。
執筆者:宜保 栄治郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報