改訂新版 世界大百科事典 「イシチドリ」の意味・わかりやすい解説
イシチドリ
チドリ目イシチドリ科Burhinidaeの鳥の総称,またはそのうちの1種を指す。この仲間は一見チドリ類に似るが,タゲリなどよりひとまわり大型で,眼が大きいのが特徴である。英名はthick-knee。この科には世界で3属9種があり,ヨーロッパ南部,アフリカ,インド,南アジア,オーストラリア,南アメリカなど,旧世界の熱帯を中心に広く分布しているが,日本にはすんでいない。全長約35~50cm,くちばしは短く,頭は丸く,眼は著しく大きく,こわい顔つきをしている。脚は長く,後趾はない。体の上面は茶褐色で下面は白い。おもに乾燥した半砂漠にすみ,地上で動物質の餌をあさるが,餌をとるのは主として夜間である。このため眼が発達しているといわれる。敵が近づくと地上にうずくまる姿勢をよくとるが,体の上面の色が周囲の色に似ているので発見されにくい。地上に直接1腹2卵を産む。卵の色彩は小石に似ている。雌雄ともに抱卵し,抱卵日数は25~27日。雛は綿羽に覆われ,かえるとまもなく巣を離れる。繁殖期以外には小群でいることが多い。
イシチドリBurhinus oedicnemus(英名stonecurleus)はイギリス南西部,ヨーロッパ南部,北アフリカ,西南アジア,インド,スリランカなどで繁殖し,繁殖地域の北部では夏鳥である。全長約40cm,くちばしは比較的短く,先が黒くて基部が黄色,体の上面は褐色で黒い縦斑があり,風切りは黒く,雨覆いは褐色で,飛ぶと翼の上面に2本の白線が出る。脚は長くて黄色。おもに夜間に活動する。地上に1腹2~3卵を産み,抱卵日数は25~27日。
執筆者:高野 伸二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報