改訂新版 世界大百科事典 「タゲリ」の意味・わかりやすい解説
タゲリ (田計里/田鳧)
lapwing
Vanellus vanellus
チドリ目チドリ科の鳥。全長約32cm。長い冠羽をもった大型のチドリ。ヨーロッパからシベリア南部にかけてのユーラシア大陸の中緯度地方で繁殖し,冬は少し南へ移動する。日本にはおもに冬鳥として渡来するが,石川,新潟,福井,茨城など諸県では少数が繁殖している。頭上,後頸(こうけい),背,翼は黒くて光沢がある。上尾筒は橙栗色,尾は基部が白く先が黒い。翼の下面は風切が黒く,雨覆は白色で対照が著しい。夏羽はのどから下胸まで黒く,顔に黒い線模様があり,冬羽は胸にだけ黒帯がある。夏羽,冬羽とも腹は白く,下尾筒は橙色。10月下旬ころ渡来し,広い水田跡などに数羽から数十羽の群れで見られる。地上を歩いては立ち止まり,餌をとってまた歩く。警戒性が強く,人が近づくとすぐ飛び立ち,ふわふわしたはばたきの飛翔(ひしよう)と白色と黒色の色彩には特徴がある。ミューと細く鳴く。巣は水田などの地上につくり,1腹4個の卵を産む。繁殖期には飛翔中のカラスやトビに急降下して威嚇する行動が見られる。
執筆者:高野 伸二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報