ウァロ(その他表記)Marcus Terentius Varro

改訂新版 世界大百科事典 「ウァロ」の意味・わかりやすい解説

ウァロ
Marcus Terentius Varro
生没年:前116-前27

該博な知識を誇った古代ローマの代表的教養人。彼の学識の深さはキケロ,セネカ,クインティリアヌス,アウグスティヌスらが異口同音にたたえている。ローマで教育を受けたのちアテナイで哲学を学んだが,政治家としても財務官,護民官,法務官を歴任し,ポンペイウスとはとくに親交が厚かった。彼の執筆活動は歴史,言語,文芸,哲学,法律,弁論地理,農業,建築,医学等多岐にわたり,55の著作名が知られているが,実際の著作数はそれをはるかに上回ると伝えられている。現存する作品は当時の農業事情を知る上で不可欠の史料とされるのうぎょうろんうぁろ《農業論》3巻と,《ラテン語論》全25巻中の5~10巻だけである。彼の功績ギリシア学問をローマの土壌に定着させた点にあるが,その幅広い知識は古代末期の代表的知識人シンマクスをして〈ローマ的教養の父〉と言わしめている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウァロ」の意味・わかりやすい解説

ウァロ
Varro, Marcus Terentius

[生]前116. サビーニー,レアーテ
[没]前27
ローマの百科全書的著述家。キケロの友人。アスカロンのアンチオコスの弟子。 600巻に及ぶ著作をなす。詩人としては,キュニコス派ガダラメニッポスに捧げたメニッポス風サトゥラを書いたが,学者としての影響が大きく,現存するのは『ラテン語論』 De lingua latina (前 45頃) ,『農業論』 Rerum rusticarumだけだが,その他あらゆる分野に考察を加えた。哲学的な主題は,人間にとって最高善は何かということであったが,彼の意義はむしろ素材の提供にあるといってよく,多くの著述家が彼に資料を求め,特にアウグスチヌスはローマの宗教に関する多くの事実を彼から借用している。ウェルギリウスも『農耕詩』を書くにあたり,『農業論』の恩恵を受けている。初めポンペイウス派であったが,カエサルの命によりローマで最初の公共図書館設立の任にあたった。カエサルの死後アントニウスによって追放されたが,のちに許された。宗教上の問題に関しては,アウグスツスの顧問格。

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百科事典マイペディア 「ウァロ」の意味・わかりやすい解説

ウァロ

古代ローマの文人,博学で有名。著書は55の名が知られる。その研究方法は独創性はないが,歴史,地理,法学,哲学,文学,建築などの諸方面に及び古代学芸の集成者の観がある。現存する著書は《農業論》《ラテン語論》のみ。

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世界大百科事典(旧版)内のウァロの言及

【医学】より

…考え方として,このような病因説がなかったわけではない。すでにローマ時代の著述家ウァロは,微小な動物が病気を媒介するという説を発表している。病気によっては,確かに,なにものかに媒介されたと思わざるをえないような病気もある。…

【農事暦】より

…ここには四季の目印の指定はないが四季ごとの農事と祭礼の次第が詳記されている。しかし共和政末期の大学者ウァロの《農業論》の中には古代の農事暦を語り直している長い章節部分があり,これは太陽暦と太陰暦の両方を用い,自然界の四季の目印を整理し日数なども詳記して体裁を整えたものである。〈これを明記し農場にはりつけて,仕事の手順とするがよい〉と記されているところからみても,ウァロの暦は実用に耐えうるものであったに違いない。…

【ラテン文学】より

…追放された詩人は僻遠の地でなおも《悲歌》と《黒海からの手紙》を書いている。 この時代の重要な散文作家としては,すでにキケロの時代から著述を続けていた百科全書的学者ウァロ,142巻の膨大な《ローマ史》によってローマをたたえた愛国の歴史家リウィウス,および古代唯一の《建築論(建築十書)》の著者ウィトルウィウスなどが挙げられる。
[帝政前期(1~2世紀)]
 この時代は,前1世紀の〈黄金時代〉に対して,〈白銀時代〉と呼ばれる。…

※「ウァロ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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