改訂新版 世界大百科事典 「ウィーヒェルト」の意味・わかりやすい解説
ウィーヒェルト
Ernst Wiechert
生没年:1887-1950
ドイツの作家。本名Barany Bjell。高校教師を務めてのち第1次大戦に従軍。負傷して復員後教職に戻ったが,33年退職してオーバーバイエルンに移住。以後ニーメラー牧師らとともに講演や文筆によってナチス批判の活動をしたため,38年ブーヒェンワルトの強制収容所に投ぜられた。《死者の森》(1945)はその体験に基づく貴重な記録である。釈放後もゲシュタポの監視下におかれ,第2次大戦中は執筆禁止処分を受けた。戦後はドイツ国民の内面的革新を期待したが現実の状況に失望,48年スイスに移住して没した。作品は故郷東プロイセンの大自然の素朴で力強い秩序への瞑想的な憧憬に満たされ,時代のあらゆる病的傾向に背を向けて,内面に宗教的に沈潜する素朴な人間性を描いている。自伝的な《森と人々》(1936),《単純な生活》(1939),絶筆となった《無名のミサ》(1950)のほか詩や童話などの作品にも,いずれもモラリスト的志向が濃厚に見られる。
執筆者:青木 順三
ウィーヒェルト
Johann Emil Wiechert
生没年:1861-1928
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報