走時曲線(読み)ソウジキョクセン(その他表記)travel-time curve

デジタル大辞泉 「走時曲線」の意味・読み・例文・類語

そうじ‐きょくせん【走時曲線】

地震波走時または到着時刻縦軸に、震央距離横軸にとり、その関係を示すグラフ地震解析基礎になる。

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精選版 日本国語大辞典 「走時曲線」の意味・読み・例文・類語

そうじ‐きょくせん【走時曲線】

  1. 〘 名詞 〙 地震波が震源から観測地点に到達するまでにかかる時間と、震央から観測地点までの距離の関係をあらわすグラフ。地震解析の基礎となるもの。

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改訂新版 世界大百科事典 「走時曲線」の意味・わかりやすい解説

走時曲線 (そうじきょくせん)
travel-time curve

地震波の走時と距離との関係を示す曲線のこと。走時とは,震源から放射されたP波S波が,いろいろな経路を伝わって地表観測点にまで達するのに要する時間で,地震記録上で地震波の到着時刻を読み取り,これから地震の発生時刻(震源時)を差し引くことで求められる。走時曲線で用いられる距離は,震央と観測点を結ぶ大円の長さ(震央距離)であり,kmなど通常の距離の単位,あるいは,この大円が地球の中心に対して張る角度で表される。走時曲線は地球内部の地震波速度分布を反映しており,逆に,これをいわゆる波線理論に基づいて解析することで,地球内部の地震波速度の構造を知ることができる。地殻マントル,核といった地球の大構造は,自然地震の走時曲線の解析により推定されたものである。こうした大構造の研究には,エネルギーの大きな自然地震の観測に基づく走時曲線が適しているが,その精度は震源決定の精度に大きく左右される(震源)。ところが,震源を精度よく決めるにはあらかじめ地震波速度の構造を正確に知る必要があり,走時曲線と構造の間に〈いたちごっこ〉の関係が生じるというやっかいな問題がある。このため,地殻など地球全体から見れば微細な部分の構造を詳しく調べるには,位置や時刻があらかじめ正確にわかっている人工地震の観測を行い,その走時曲線を解析する。地下の地震波速度の構造と走時曲線は1対1に対応するものであり,前者を与えれば後者は理論的に計算できる。ある標準的な構造についてこのような計算をし,さまざまな経路を伝わるP波やS波の走時と距離の関係を表にしたものは標準走時表などと呼ばれ,震源決定に使われる。ジェフリーズJeffreysとブレンBullenが1940年に発表した標準走時表は特に有名で,国際地震センターInternational Seismological Centreでは,今でもこの表により震源を決定している。日本の気象庁では,この走時表に人工地震の結果を加味したものを使っているが,各大学や研究機関の観測所では,それぞれ独自の走時表により震源を決定している。対象となる地域が狭くて高い震源決定精度が要求される場合には,構造の地域差が無視できなくなるので,このような走時表の不統一もある程度はいたしかたないことである。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「走時曲線」の意味・わかりやすい解説

走時曲線
そうじきょくせん
travel-time curve

走時と震央距離の間の関係を表す曲線。走時とは、P波やS波などの地震波が、震源を出てから観測点に到着するまでの時間のことである。震央距離とは、震央と観測点の間の距離を、地球表面に沿って測った最短距離のことである。走時曲線は、地震波を多数の観測点で観測することにより得られる。走時曲線を用いて、地下の層構造を推定することができる。

[山下輝夫]

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百科事典マイペディア 「走時曲線」の意味・わかりやすい解説

走時曲線【そうじきょくせん】

特定の地震について,グラフの縦軸に各観測点に地震波が到達するに要した時間(走時)をとり,横軸にそれぞれの観測点の震央距離をとったときできる曲線。この曲線から地震波の速度がわかり,地球内部の構造が推定できる。
→関連項目地震学地震波

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「走時曲線」の意味・わかりやすい解説

走時曲線
そうじきょくせん
time-distance curve

地震学用語。観測点から震源上の地表点までの地表に沿った距離 (震央距離) を横軸に,地震波が震源から観測点に達する時間 (走時) を縦軸に記した曲線をいう。この曲線の形や原点を通るかどうかなどを調べることにより,震源の深さや地球内部の構造の研究に手がかりが得られる。

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