ウィーン条約(読み)うぃーんじょうやく(英語表記)Vienna Convention

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウィーン条約」の意味・わかりやすい解説

ウィーン条約
うぃーんじょうやく
Vienna Convention

オゾン層の変化による悪影響から人の健康および環境を保護することを目的とする条約。正式名称は「オゾン層の保護のためのウィーン条約Vienna Convention for the Protection of the Ozone Layer」である。1985年3月に採択され、1988年9月に発効し、日本については、1988年(昭和63)12月に発効した。締約国はEUを含む198か国である(2021年4月時点)。

 1974年にCFCクロロフルオロカーボン、いわゆるフロン)によってオゾン層が破壊されることが明らかにされ、欧米諸国においてエアゾール製品の規制が行われた。その後、国連環境計画UNEP)を中心にして国際的な対策が検討された。

 この条約は、オゾン層に変化を与えるような人の活動を規制する立法措置または行政措置をとること、関連分野の研究、観測および情報交換に協力することなどを定めている。また、具体的な規制のための国際的な措置や基準に関する議定書を採択することも定めている。

[磯崎博司 2021年9月17日]

モントリオール議定書

南極上空のオゾンホールが1980年代後半から大きくなったため、1987年9月にモントリオール議定書が採択され、1989年1月(日本でも同月)に発効した。この議定書はCFCなどの消費量とともに生産量についても削減値を定めているが、開発レベルを考慮して開発途上国には規制基準を緩和している。また、非締約国に対するCFCなどの貿易を禁止しているが、差別的な貿易規制であるとしてWTO世界貿易機関)との間で調整を必要としている。具体的な規制対象物質として、当初は、5種類のCFCと3種類のハロンの生産量および消費量の段階的削減が定められていた。

 その後、科学的知見が蓄積されるにつれて当初の規制では不十分なことが明らかとなった。1990年と1992年に議定書の改訂が行われ、新たに、CFC類の追加とともに、四塩化炭素(テトラクロロメタン)および1,1,1-トリクロロエタン(メチルクロロホルム)、HCFCハイドロクロロフルオロカーボン)、HBFC(ハイドロブロモフルオロカーボン)、ブロモクロロメタン、および臭化メチルを追加し、削減スケジュールも前倒しした。具体的には全廃時期は、付属書A、Bに掲載されているCFC類は1996年(開発途上国は2010年)、付属書Aのハロン類は1994年(開発途上国は2010年)、付属書Bのメチルクロロホルムは1996年(開発途上国は2015年)、付属書Bの四塩化炭素は1996年(開発途上国は2010年)、付属書CのHCFCは2030年(開発途上国は2040年)、HBFCは1996年、ブロモクロロメタンは2002年、付属書Eの臭化メチルは2005年(開発途上国は2015年)とされている。また、必要とされる資金および技術を開発途上国に供与するためのオゾン層保護基金が設立された。

 一方で、フロン類が規制されたため冷媒用の代替物質としてハイドロフルオロカーボン(HFC)が多用された。HFCはオゾン層破壊物質ではないが、強い温暖化効果を有するため、18種類のHFCが規制対象に追加され、その生産・消費量の削減が定められた(キガリ改正、採択2016年10月、発効2019年1月。改正名は第28回締約国会合の開催地であるルワンダのキガリにちなむ)。オゾン層破壊防止対策によって別の汚染(気候変動)を生じさせることがないように、本来の対象ではない物質を規制対象にしたのである。

 日本では、キガリ改正は2018年(平成30)12月の受諾書の寄託を経て2019年1月に発効した。また、モントリオール議定書については「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律(オゾン層保護法)」(昭和63年法律第53号)が対応しており、輸出入については「外国為替及び外国貿易法」も関係している。また、2001年には、「特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律」(フロン回収・破壊法)が制定された。同法は、2013年に「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律」(フロン排出抑制法)に改称された。

[磯崎博司 2021年9月17日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例