外交関係に関するウィーン条約(読み)がいこうかんけいにかんするウィーンじょうやく

改訂新版 世界大百科事典 の解説

外交関係に関するウィーン条約 (がいこうかんけいにかんするウィーンじょうやく)

1961年4月18日ウィーン会議で採択され,64年4月24日発効した外交関係に関する基本的な多数国間条約。日本については64年7月8日に発効(1983年2月1日現在,主要国を含む135ヵ国が加入)。かつては国家間の外交関係および外交特権に関する国際法は,古くからの慣行を基礎にして成立したもので,ほとんどすべて不文の法であったため明確でないところも多く,必ずしも統一されていなかった。このため,国際連合の下にある国際法委員会は,1954年国際法の法典化事業の一つとして〈外交関係と外交特権〉をとりあげることを決定し,57年および58年にこの問題を審議草案を作成した。この草案は,国際連合の決定で61年3~4月にウィーンで開催された外交関係会議で審議され,一部の修正が加えられたのち53ヵ条からなる条約として採択された。この条約は,外交関係の開設外交使節団派遣接受外交使節団の長の階級席次,外交特権・免除といった外交関係に関する基本的諸問題につき網羅的に規定している。その規定の大部分はすでに確立していた国際慣習法を成文化したものであるが,事務および技術職員の特権・免除の規定のごとく,新たな国際法を立法するものといえる規定も少なくない。なお,この条約には,本条約の解釈または適用について生ずる紛争国際司法裁判所に付託するという〈紛争の義務的解決に関する選択議定書〉が付属しており,日本はこの議定書も同時に批准した。
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百科事典マイペディア の解説

外交関係に関するウィーン条約【がいこうかんけいにかんするウィーンじょうやく】

ウィーン条約とも。外交関係に関する法規を取り決めた条約。1961年国際連合主催のもとにウィーンで調印(1964年発効)。外交使節の任命,外交特権などに関し,従来の国際慣習を明文化した。日本は1962年調印(1964年批准書寄託)。外交使節の席次などを決定した1815年のウィーン規則とともに,この方面では画期的意義をもつ。
→関連項目アグレマン

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

外交関係に関するウィーン条約
がいこうかんけいにかんするウィーンじょうやく
Vienna Convention on Diplomatic Relations

国連国際法委員会が,従来主として慣習法の形式で存在していた外交関係および特権に関する国際法の規則を法典化し,明確にした条約。外交使節団の任務,使節団の特権および管轄権からの免除,外交官の特権,免除などについて定められている。国連国際法委員会は,1954年から審議を開始し,58年に最終案を作成した。 61年3月2日から 81ヵ国が参加してウィーンで外交関係会議が開催され,審議の結果,4月 18日にこの条約が採択された。 64年4月4日発効。

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世界大百科事典(旧版)内の外交関係に関するウィーン条約の言及

【外交特権】より

…外交特権は従来より国際慣習法上認められてきたものであるが,特権免除の根拠や範囲・内容については必ずしも統一されていなかった。しかし,1961年に〈外交関係に関するウィーン条約〉が採択され,慣習法が法典化されたため,外交特権は国際法上明確なものとなった。この条約は,外交特権の根拠を〈国を代表する外交使節団の任務の能率的な遂行の確保〉にあるとして,公館・公文書の不可侵,公館に対する課税の免除,通信の自由,外交官の身体・住居・書類・通信・財産の不可侵および接受国の刑事・行政・民事に関する裁判権,課税権,国家役務等からの免除などを規定している(事務・技術職員およびその家族については,民事・行政裁判権の免除が公務遂行中の行為に限定され,関税の免除が赴任の際に輸入するものに限定されているほかは,外交官と同一の特権・免除を享有する。…

【不可侵権】より

…また,公文書,書類,公用返信も不可侵なので,接受国は,外国の使節団が用いる暗号をみだりに解読してはならない。こうした外交官の不可侵権は,1961年の〈外交関係に関するウィーン条約〉に詳しく定められているが,それにもかかわらず,外交官が人質となる事件が頻発したため,73年には〈外交官を含む国際的保護を受ける者に対する犯罪の防止と処罰に関する条約〉が,79年には〈人質行為防止条約〉が採択された。外国の領事も不可侵権を有するが,外交官の不可侵権が国際慣習法として確立しているのに比べ,領事の不可侵権は条約――たとえば,1963年の〈領事関係に関するウィーン条約〉――によって定められた範囲内においてのみ認められるにすぎない。…

※「外交関係に関するウィーン条約」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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