日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウェンツェル」の意味・わかりやすい解説
ウェンツェル
うぇんつぇる
Gregor Wentzel
(1898―1978)
ドイツの理論物理学者。デュッセルドルフで生まれる。フライブルク、ミュンヘンなどの大学で学び、1926年ライプツィヒ大学員外教授、1928年よりチューリヒ大学教授となった。その後アメリカに渡り、1948年以来シカゴ大学物理学教授。1920年代、古典量子力学と量子力学を結ぶ橋渡しの役目をする研究を多く行った。その一つに、クラマースらとともに改良提案した「WKB法」(ウェンツェル‐クラマース‐ブリュアン法)がある。これは波動力学の近似法で、近似が高くなるにつれて古典論から量子力学の厳密解へと近づくものとされた。さらに場の量子論の矛盾の分析、摂動(せつどう)近似に対立する強い相互作用の理論による中間子と核子の理論など多くの業績がある。
[佐藤 忠]