日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウェード」の意味・わかりやすい解説
ウェード
うぇーど
Sir Thomas Francis Wade
(1818―1895)
イギリスの外交官、ウェード式ローマ字の考案者。ケンブリッジ大学卒業後、陸軍に入り、中尉としてアヘン戦争に従軍。戦争終結後は退役して香港(ホンコン)で通訳官を務めた。1852年上海(シャンハイ)副領事、1854年上海の海関(かいかん)の初代税務司、1855年香港の貿易監督官の漢文秘書官などを歴任。1858年アロー戦争の講和交渉に際し、イギリス全権エルギンに随行して天津(てんしん/ティエンチン)へ赴き、実際の交渉を担当した。1861~1871年北京(ペキン)のイギリス公使館に勤務、1871~1883年公使に任命され、1876年、雲南問題(マーガリ殺害事件)処理のため李鴻章(りこうしょう)と交渉して芝罘(チーフ)条約を結んだ。帰国後の1888年、ケンブリッジ大学の初代中国語教授となり、中国勤務中に収集した書籍のコレクションを同大学に寄贈した。中国語のローマ字による表記法(ウェード式ローマ字)を考案し、これを用いて中国語の入門書『語言自邇(じじ)集』(1867)を著した。
[西川喜久子 2018年6月19日]