日本では単にウクラードといい,経済制度と訳すが,ロシア語ではobshchestvenno-ekonomicheskii uklad(社会的経済制度)というのが通例である。ウクラードそのものは〈組織〉〈制度〉等を意味する語であるが,ここでは,ある社会の土台(下部構造)を構成するさまざまな社会的生産諸関係のうち,特定の型をもつ生産関係の一体系をいう。この用語法は,ロシア革命後資本主義から社会主義への過渡期にあったソビエト経済について,レーニンが五つのウクラード(家父長的現物経済,小商品生産,私経済的資本主義,国家資本主義,社会主義)の存在を指摘して以来,マルクス経済学において広く普及するようになった。
レーニンの指摘のように,経済的社会構成体のある時代から次の時代への移行期には多かれ少なかれ複数のウクラードをもつ社会(多ウクラード社会)が現れる。また個々の具体的な社会の経済構造は,すでにできあがった構成をとっている場合でも,ひとつの基本的な支配的ウクラードのほかに副次的な従属的ウクラードが存在する。経済的社会構成体の歴史的一時代を規定する基本的・支配的ウクラードには,原始共同体,奴隷制,封建制,資本主義,共産主義がある。資本主義は,封建制内部において小商品生産を基盤に自律的な一ウクラードとして生成し,やがて支配的ウクラードに転化するというのが一般的発展法則であるが,具体的な資本主義社会には封建的遺制や小商品生産が資本に従属しながらも残存する。とくに後進の資本主義(革命前のロシアや第2次大戦前の日本)の場合,封建制が農業を中心に頑強に残り,資本の発展を制約した。支配的ウクラードと従属的ウクラードとの相互規定とからみ合いの関係が,各国資本主義の特殊性の基礎になるのである。
生産手段の全社会的所有に基づく社会主義ウクラードは,資本主義内部に自生することはなく,プロレタリア革命後の過渡期に資本主義およびそれ以前の諸ウクラードの破砕と並行して創出されてくる。
執筆者:二瓶 剛男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
特定の歴史的社会の経済的土台内部に存在する異なった類型の生産関係をさすロシア語。ロシア語文献では、社会経済的ウクラードまたは経済的ウクラードと記されることが多く、日本では普通、経済制度と訳されている。ある社会構成体の一般的性格は、一定の発展水準の生産力に照応する基本的生産関係によって規定される。社会構成体の継起的発展に際し、その基底では基本的かつ支配的なウクラードの交代が生ずる。しかし、無階級社会の場合を除き、通常、特定の歴史的社会の経済的土台内部には、基本的ウクラード以外に複数の従属的ないし付随的ウクラードが存在しうる。そのようなものとしては、先行の社会構成体から受け継がれた遺制(たとえば資本主義社会内部の封建的土地所有関係)や、生成途上の質的に新しい生産関係、ならびに歴史的には顕著な役割を演ずるがつねに第二義的地位にとどまっているウクラード(たとえば小商品生産)などがある。並存する諸ウクラードのそれぞれの比重、相互の絡み合いが、当の歴史的社会に階級構造をも含む一定の特殊的性格を付与することとなる。多ウクラード経済がとりわけ注目されるのは、社会構成体の移行期である。ロシア十月革命(1917)直後にレーニンは、五つのウクラードの存在とそれらの相互関係を解明した。また、現代発展途上国の経済的分析における多ウクラード論的視角は有効である。
[門脇 彰]
『レーニン著『「左翼的な」児戯と小ブルジョア性とについて』(『レーニン全集27 1918年』所収・1958・大月書店)』
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