シリア北西部,アレッポの南南西55kmにあり,現在テル・マルディフTell Mardikhと呼ばれる遺跡の古代名。大量の楔形文字粘土板文書の発掘によって,前3千~前2千年紀におけるシリアの歴史およびメソポタミアとの関係の解明が期待されている。長辺約900m,短辺約700mの周囲を塁壁で囲まれた巨大なテルで,1964年以来マッティエP.Matthiaeを隊長とするローマ大学調査隊が発掘を続けている。最古層のI層に前約3500-前約2900年,VII層に後3~7世紀の年代を与えている。テルの中央に径約170mのアクロポリスがあり,ここで発掘されたIIB1層(前約2400-前約2250)に属する宮殿Gにおいて,北西セム語で書かれた約1万7000枚にのぼる粘土板文書が発掘され,これらの〈エブラ文書〉により古代の文書庫における収蔵方法のみならず,都市における管理体制,メソポタミアとの政治的な関係などが明らかになりつつある。この宮殿Gはアッカドのナラムシン王に破壊されたようである。なお〈エブラ文書〉に旧約聖書との関連が認められるかどうかをめぐって論争が続けられている。
執筆者:小野山 節
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
古代にシリア北部にあった都市国家。その存在は、メソポタミアのシュメールやアッカド時代の粘土板文書によってよく知られていた。メソポタミアはユーフラテス川に沿って上流のマリ、エマルを経て、地中海沿岸地帯やアナトリア地方との交易を行い、メソポタミアには存在しない鉱物、織物、木材などの製品や材料を輸入していたが、交易の中心地として、エブラ王国が果たした役割はきわめて大きいものがあった。年代は紀元前2400年に比定されているが、エブラ王国はシリア北部の交易センターの中心として活躍している。1964年にローマ大学のパウロ・マッティエによって、アレッポの南約65キロメートルにあるテル・マルディフの発掘調査が開始され、ここが都市国家エブラであることがわかった。城壁を巡らした宮殿、風俗図浮彫りの石製容器、ライオンと兵士を浮彫りにした奉献用の石製容器などが発見された。もっとも重要なことは、宮殿の付属文書館から75年に1万5000点以上の粘土板文書が発見され、エブラ王国の置かれた交易センターとしての役割の重要性が確認されたことである。
[糸賀昌昭]
『マッオッゾーニ著、糸賀昌昭訳「シリアの古代都市文化」(『図説世界の考古学2 古代オリエントの世界』所収・1984・福武書店)』
前3~前2千年紀に栄えたシリアの都市。アレッポ南南西約55kmのテル・マルディクと同定される。1964年からの発掘で初期および中期青銅器時代の遺構が確認された。1970年代半ばから前2400~前2300年頃の約2万枚の粘土板文書が出土し,当時シリア広域に君臨する強大な王国の中心であったことが明らかになった。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
…彼の王朝は前3千年紀末葉のシリアを支配した。またアレッポの南南西にある都市エブラが全シリアに支配勢力を伸ばした(前2400ころ‐前2250ころ)。これはシリア史上まれにみる帝国であった。…
※「エブラ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
米テスラと低価格EVでシェアを広げる中国大手、比亜迪(BYD)が激しいトップ争いを繰り広げている。英調査会社グローバルデータによると、2023年の世界販売台数は約978万7千台。ガソリン車などを含む...
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加