おらが春(読み)オラガハル

デジタル大辞泉 「おらが春」の意味・読み・例文・類語

おらがはる【おらが春】

江戸後期の俳諧俳文集。1冊。小林一茶著。文政2年(1819)成立一茶死後25年たった嘉永5年(1852)刊。一茶57歳の年の元旦から歳末までの見聞感想などを、長女の死を中心発句を交えて記したもの。

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改訂新版 世界大百科事典 「おらが春」の意味・わかりやすい解説

おらが春 (おらがはる)

俳文発句集。一茶遺稿。没後25年の1852年(嘉永5),信州の白井一之が,山岸梅塵家伝来の真跡を譲られて逸淵序と四山人・西馬の跋を添え,模刻刊行初版は〈信陽有明菴蔵梓〉とあり,一之の私家版である。のち江戸の書肆に移って版を重ね,広く流布した。一茶57歳の1819年(文政2)の元旦から歳末に至る随想におりおりの句を交える。〈目出度さもちう位也おらが春〉に始まり,巻末を〈ともかくもあなた任せのとしの暮〉と結び,首尾呼応して家庭的に不幸な,蹉跌(さてつ)の末に到達した“あなた任せ”の人生観を表白した。50歳を超えてようやく得た家庭生活も,一茶の願いに反して過酷であった。身の老いを忘れて長女さとの成長を喜ぶのもつかのま,生後1年余の愛児の命を痘瘡(とうそう)に奪われ,その心境を綴る章は悲痛を極める。長女の死を記念すべく編んだ本書は,その悲喜哀楽の転変の相を軽妙洒脱な筆致で語り,晩年の円熟境を示す傑作である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「おらが春」の意味・わかりやすい解説

おらが春
おらがはる

小林一茶(いっさ)の代表的な句文集(くぶんしゅう)。一茶死後25年たって、弟子の白井一之(いっし)が上梓(じょうし)。1819年(文政2)、一茶57歳の1年間の随想、見聞、句作だが、ちくりと皮肉を仕込んだ見聞にも、この年、長女さとを痘瘡(とうそう)で死なせて、その悲嘆の情をありていにつづった文章にも、一茶の円熟が感じられる。そして、重なる子供の死(3年前に長男死亡)を通じての、浄土真宗門徒一茶の如来(にょらい)信仰成熟が目をひく。一之がこの題を選んだ句文集最初の句「目出度(めでた)さもちう位也(くらいなり)おらが春」を、集末尾の句「ともかくもあなた任(まか)せのとしの暮(くれ)」と照応させつつ、「自力他力」の「小(こ)むつかしき子細(しさい)」を超えた、「あなた任せ」の境地を一茶は熱っぽく述べている。

金子兜太

『『一茶全集6』(1976・信濃毎日新聞社)』『勝峯晋風著『評釈おらが春』(1941・十字屋書店)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「おらが春」の意味・わかりやすい解説

おらが春
おらがはる

江戸時代後期の俳句俳文集。小林一茶著。1冊。一茶の遺稿真跡を透き写しにして,没後 25年にあたる嘉永5 (1852) 年に刊行。挿絵も一茶筆。『おらが春』という書名は著者の命名ではなく,巻頭の一文中にある発句「めでたさも中くらゐなりおらが春」により刊行者が名づけたもの。文政2 (19) 年一茶 57歳の元旦から歳末にいたる1年間の感想,見聞と,おりおりの発句を書き連ねたもので,一茶の代表的著作。文もよく句も精選され,一茶自身も公刊の意志があったらしい。一茶晩年の身辺の事情や,信仰的安住に到達した心境などもうかがわれる。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「おらが春」の解説

おらが春
おらがはる

俳文俳句集。1冊。一茶(いっさ)著。1820年(文政3)成稿と推定される。版本は一茶没後25年目の52年(嘉永5)刊。逸淵(いつえん)序。四山人・西馬跋。19年の1年間の随想・見聞に四季の発句を配した一茶晩年の代表作。文は長短18編ほどを収録し,長女さとの生と死をめぐる記述が中心。初版本の巻末には諸家の寄せた俳諧作品ものせる。「古典俳文学大系」「一茶全集」所収。

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百科事典マイペディア 「おらが春」の意味・わかりやすい解説

おらが春【おらがはる】

江戸後期の日記句文集。1冊。一茶著。1819年成立,1852年刊。1819年の正月から暮までの身辺雑記,回想を収める。折にふれての句が挿入され,著者晩年の心境を巧まず吐露した,一茶の遺稿にして代表作。

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旺文社日本史事典 三訂版 「おらが春」の解説

おらが春
おらがはる

江戸後期,小林一茶の俳文俳句集
1852年刊。1冊。 '19年の正月から1年間の雑感をまとめ,挿絵を加えたもの。

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