カササギ(読み)かささぎ(英語表記)magpie

翻訳|magpie

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カササギ」の意味・わかりやすい解説

カササギ
かささぎ / 鵲
magpie
[学] Pica pica

鳥綱スズメ目カラス科の鳥。アジアの大部分とヨーロッパと北アメリカ西部に分布する全長約45センチメートルの尾の長い鳥で、肩と腹部が白いほかは主として金属光沢のある黒色をしている。日本では佐賀平野を中心に北九州西部の低地にのみ周年生息するが、これは1600年ごろに大陸から輸入放鳥されたものがすみ着いたとする説がある。九州では農村の集落などにつがいで狭い縄張りをもって半集団的に樹上に営巣する。巣はカラス科の他種と異なり径1メートルほどの大きな球形で、出入口は側面にある。1腹の卵数は5~8個。成鳥は一年中つがいで生活するが、巣立った若鳥は秋冬の間は群れになって暮らしている。採食は主として地上か低木で行い、ほかのカラス科の鳥と同じく雑食性である。また、カチカチと聞こえる鳴き声からカチガラス、佐賀県を中心に生息するためヒゼンガラスの別名をもつ。

 カササギ属にはもう1種キバシカササギP. nuttalliがあって北アメリカ西岸に生息する。アメリカでは、カササギがblack-billed magpieといわれるのに対し、本種はyellow-billed magpieとよばれる。

浦本昌紀

民俗

ヨーロッパでは、カササギはおしゃべりで、前兆を表す鳥とされている。フィンランドには、カササギは神の意志に逆らって人に翌日死ぬことを告げたので、神はその禁を忘れさせないためにと舌を抜き、長い尾をつけたという由来譚(たん)がある。一般には吉兆を示す鳥とするが、二面性もあり、ドイツなどでは悪魔的な鳥とされる。フィンランドにはカササギは悪魔が創造した鳥で、その後神が認めたという伝えもある。イギリスでは2羽で飛んでいると吉兆、1羽で飛ぶと凶兆という。つがいで生活するところに吉鳥の思想が生まれている。中国にも「鵲喜(じゃっき)」(良い前兆の意)という語があり、カササギの鳴き声は吉事の前触れとする。また古代から七夕(たなばた)の伝承とも結び付き、1年に一度、7月7日に牽牛(けんぎゅう)星と織女(しょくじょ)星が出会うときには、カササギが2羽で天の川に橋を架けて渡すという伝えもある。同じ伝えは朝鮮にもあり、この日家の近くでカササギをみつけると、怠け者といって追い回すという。この七夕の伝説は、日本でも平安時代から知られており、『大和(やまと)物語』に「かささぎの渡せる橋」、『枕草子(まくらのそうし)』に「かささぎの橋」などとみえている。

[小島瓔

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カササギ」の意味・わかりやすい解説

カササギ
Pica pica; Eurasian magpie

スズメ目カラス科。全長 45cm。頭,胸,背,,尾は黒く,金属光沢のある緑色や紫色のつやがある。腹,肩,翼の羽の半分先が白い。尾は長い。大きな木の上や電柱上に枯れ枝を使って巣をつくる。雑食性で,昆虫類,小型哺乳類,木の実などを食べる。秋冬には群れをつくって生活する。アフリカ北西端,ヨーロッパから東アジアにかけての地域とロシア東部のカムチャツカ半島などに広く繁殖分布する。日本では九州地方佐賀平野および筑後川下流域にのみ繁殖分布していたが,今日では北海道本州四国地方にも生息している。九州に生息するカササギは 16世紀に朝鮮半島から持ち込まれたとも考えられているが,本州や北海道に生息する鳥の起源は不明である。

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