カニチドリ(その他表記)Dromas ardeola; crab-plover

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カニチドリ」の意味・わかりやすい解説

カニチドリ
Dromas ardeola; crab-plover

チドリ目カニチドリ科全長 33~36cm。黒いは体の大きさに不釣り合いなぐらい大きい。形も太くて鋭く,まっすぐに伸び,カニをとって食べるのに適している。灰黒色の脚も長い。背中とは黒く,体のほかの部分は白色。チドリ科に近縁であるが,解剖学上の特異性から 1科 1属 1種に分類されている。チドリ類と違って集団繁殖し,砂の土手に 1.2~2mの深さのトンネル状の巣穴を掘る。産卵数も 1個,まれに 2個である。夜行性で,採食時にも大きな群れになり,カニを好んで食べる。インドから西のインド洋沿岸島々に生息し,ペルシア湾アラビア半島紅海ソマリア周辺で繁殖する。おもに留鳥だが,繁殖を終えると南はタンザニアマダガスカル,東はスリランカアンダマン諸島あたりまで生息域が広がる。

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改訂新版 世界大百科事典 「カニチドリ」の意味・わかりやすい解説

カニチドリ (蟹千鳥)
crab plover
Dromas ardeola

チドリ目カニチドリ科の鳥。この科はこの1種だけからなる。マダガスカル,コモロ諸島,紅海沿岸,ペルシア湾沿岸,インド沿岸,スリランカ,アンダマン諸島,ニコバル諸島など,インド洋周辺にだけ分布し,海岸干潟サンゴ礁などにすむ。全長約37.5cm。黒いくちばしはやや長くまっすぐで,がんじょうである。脚は長い。翼も長くて先がとがっている。背,肩羽,風切りは黒く,その他の部分は白い。前方の3本のあしゆびの間にはセイタカシギのものに似た不完全な水かきがあるが,セイタカシギと違って長い後ゆびをもっている。地上でエビ,カニ,軟体動物などをあさり,そのがんじょうなくちばしでたやすく獲物をくだいて食べる。群れをつくる習性が強く,ときには大群をつくる。集団で繁殖し,砂の中にトンネル状の巣穴を掘り,その中に1腹1卵を産む。巣穴は長さ1.2~1.5mで,初め下降し,それから少し上がって産室になっている。卵は,チドリ亜目の鳥としてはほかに例がない白色無斑で,体に比べて著しく大きい。孵化(ふか)したばかりの雛は綿羽に包まれ,すぐに歩くことができるが,巣穴の中にとどまっていて親鳥の給餌を受ける。カニチドリは非常に騒がしい鳥で,大きなしゃがれ声を飛んでいるときや地上を歩いているときに発する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カニチドリ」の意味・わかりやすい解説

カニチドリ
かにちどり / 蟹千鳥
crab plover
[学] Dromas ardeola

鳥綱チドリ目カニチドリ科の鳥。1科1属1種。ペルシア湾沿岸、インド、スリランカの沿岸、アンダマン諸島、アフリカの紅海南部、タンザニア東部の沿岸などインド洋に面した海岸に分布している。全長35センチメートル。全身白色で背と翼が黒色。嘴(くちばし)は頑丈で黒色をしている。餌(えさ)は海岸にすむ甲殻類や軟体動物で、ことにカニ類を好んで食べる。非常に逃げ足が速い。群れをつくる性質が強く、コロニーをつくって繁殖し、海岸の砂丘に奥行1.5メートルほどの穴を掘って巣をつくり、白色の1卵を産む。

[柳澤紀夫]

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