セイタカシギ

改訂新版 世界大百科事典 「セイタカシギ」の意味・わかりやすい解説

セイタカシギ (丈高鷸)

チドリ目セイタカシギ科Recurvirostridaeの鳥の総称,またはそのうちの1種を指す。この科の鳥は世界の温熱帯に広く分布し,4属7種がある。どの種も脚が長く,スマートな形をしている。ソリハシセイタカシギ類(英名avocet)はソリハシセイタカシギ属Recurvirostraの1属4種からなり,ユーラシアとアフリカ,オーストラリア,南アメリカにそれぞれ1種ずつ分布している。全長は約40cm内外。形,大きさ,羽色は互いによく似ていて,くちばしは細くて著しく上に反り,体は白くて肩羽と翼の一部は黒い。種によって頭部黒色褐色白色の違いがある。干潟入江湿地などの浅水中でくちばしを左右に振って小動物をとる。日本には1種ソリハシセイタカシギR.avocettaがまれな旅鳥,または冬鳥として渡来し,青森,宮城,東京,愛知,山口,沖縄で数回の記録がある。トキハシゲリIbidorhynchus sturthersii(英名ibis bill)は1属1種の特殊な鳥で,中央アジアの高原の川の近くに留鳥としてすみ,石の下の昆虫などを食べる。全長約33cm,くちばしは赤くて下に湾曲し,頭上から顔,のどは黒く,くびと胸は灰色,体の上面は灰褐色,腹は白くて胸との境に黒帯がある。脚は比較的短くて赤い。セイタカシギ類(英名stilt)にはセイタカシギ属HimantopusムネアカセイタカシギCladorhynchusの2属があり,それぞれセイタカシギH.himantopus(英名black-winged stilt)とムネアカセイタカシギC.leucocephalus(英名banded stilt)の1種ずつがいる。ムネアカセイタカシギはオーストラリアの特産であるが,セイタカシギは世界の温熱帯に広く分布し,8種に分ける場合もある。全長約30~35cm,くちばしは細くてまっすぐに長く,脚は著しく長くて淡紅色。体の上面は光沢のある黒色で下面は白く,頭上から後頸(こうけい)に黒斑があるが,ニュージーランドには全身黒い色の亜種がいる。日本には数少ない旅鳥として渡来するが,近年しだいに記録が増え,1975年には愛知県鍋田で繁殖が確認された。その後も愛知県,千葉県で繁殖が発見されている。内陸の湿地,水田,蓮田,入江,干拓地の水たまりなどにいる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「セイタカシギ」の意味・わかりやすい解説

セイタカシギ
Himantopus himantopus; black-winged stilt

チドリ目セイタカシギ科。全長 33~36cm。不釣り合いなほど長いピンク色の脚をもつ。も細長い。羽色は雄の頭上から後頸が白色や黒色,白黒のまだら模様といった変異がある。肩とは虹色に輝く黒で,腹面は白い。雌は雄の黒い部位が褐色がかる。ヨーロッパ西部,地中海沿岸,サハラ砂漠を除くアフリカ,南アジアから東南アジア東アジア南部で繁殖する。繁殖地の南部では留鳥。北部では夏鳥(→渡り鳥)で,繁殖後は南部の繁殖地に渡る。水ぎわの陸地や浅瀬に草を積んで巣をつくり,湿地や沼沢地で昆虫や小動物をとる。日本では渡りの際に立ち寄るほか,1975年に愛知県で,1978年以降は本州中部や沖縄島でも繁殖が確認され,留鳥や冬鳥としても生息する。なお,セイタカシギ科 Recurvirostridaeは 3属 10種からなり,どの種も脚が非常に長い。(→渉禽類

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「セイタカシギ」の意味・わかりやすい解説

セイタカシギ
せいたかしぎ / 丈高鷸
black-winged stilt
[学] Himantopus himantopus

鳥綱チドリ目セイタカシギ科の鳥。ユーラシアの中部以南で繁殖し、冬は南へ移動するものもある。日本にはおもに旅鳥として渡来するが、数は少ない。しかし日本で越冬するものもあり、愛知県や千葉県では繁殖の記録もある。全長約31センチメートル、嘴(くちばし)は細くて長く、足は著しく長い。体は細く、翼も細長くて先はとがっている。背と翼は黒く、頭部と体の下面は白い。長く赤い足を静かに運んで、水田やハス田の浅い水たまりを歩き、昆虫や小魚などをとらえる。飛ぶときには、長い足が尾羽を越えて後ろに出る。干拓地や湿地の地上に巣をつくり、4個の卵を産む。巣に外敵が近づくと、空から急降下して威嚇したり、また翼を広げて擬傷動作をしたりする。

 なお、セイタカシギ科Recurvirostridaeの仲間は世界の温帯、熱帯に7種が分布する。どの種も足が著しく長いのが特徴。

[高野伸二]


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百科事典マイペディア 「セイタカシギ」の意味・わかりやすい解説

セイタカシギ

セイタカシギ科の鳥。翼長23cm。体の割にきわめて長い足をもち,くちばしも長い。背中と翼は雄が黒色で,雌は褐色。世界の温帯,熱帯に広く分布し,日本ではこれまで迷鳥とされていたが,近年東京湾沿いの地域などで繁殖するようになった。湖沼や河口,海岸などに生息し,ゴカイや甲殻類,昆虫,魚,らん藻などを食べる。絶滅危惧II類(環境省第4次レッドリスト)。

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