改訂新版 世界大百科事典 「カラスガイ」の意味・わかりやすい解説
カラスガイ (烏貝)
Cristaria plicata
湖沼にすむ大型の黒いイシガイ科の二枚貝。分布は中国を中心にシベリア,朝鮮半島,日本に及ぶ。殻の長さ20cm,高さ12cm,膨らみ6cmになるが,大型の個体は長さ25cmを超える。表面は幼貝のときは黄緑色であるが成長とともに黒色となる。その色からカラスガイの名がついた。琵琶湖地方では淡水真珠養殖の母貝となる殻の厚いイケチョウガイをオンガイというのに対して,殻の薄いこの種をメンガイと呼んで,雌雄と考えていた。また,幼貝のときは背上に平たい板状の突起があるが,これも成長すると失われる。さらに成長とともに後背に低い波状のしわができるが,近似種とこの種の外観上の区別点である。内面は強い真珠光沢がある。ドブガイAnodonta woodianaとよく混同されるが,この種は内面の殻頂の後に長いかみ合せの歯があるのに対して,ドブガイはまったくかみ合せの歯がない。子貝は外側のえらの保育囊で成長し,グロキジウム幼生になると水中に放出されて,淡水魚の体表やえらに付着寄生して成長し,後に離れて水底に落ちて幼貝となる。タナゴ類は産卵管をカラスガイの出水口にさし入れて外套(がいとう)に産卵し,卵は保護されて孵化(ふか),成長する。肉は食用にするが不味,殻は殻皮を削り真珠層のみにして貝細工の材料にするほか,中国ではカラスガイやドブガイの殻と外套膜の間に鉛製の仏像などを挿入して,その上を真珠層で覆わせて,仏像真珠をつくらせ,これが信仰されたこともある。このことが真珠養殖のヒントになって,後の真円真珠の養殖に発展した。
執筆者:波部 忠重
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報