日本大百科全書(ニッポニカ) 「カルフーン」の意味・わかりやすい解説
カルフーン
かるふーん
John Caldwell Calhoun
(1782―1850)
アメリカの政治家。3月18日サウス・カロライナ州生まれ。同州下院議員、連邦下院議員、第6代大統領J・Q・アダムズおよび第7代大統領A・ジャクソン治下の副大統領(途中辞任)、連邦上院議員、国務長官の要職を歴任し、南北対立の緊張を深める歴史過程にあって、連邦分裂の危機を訴えるなかで南部の代弁者の役割を果たした。主論稿に『政治論』と『合衆国憲法および政府論』があり、前者は政治についての基本理論を、後者は合衆国という連邦国家の政体とその憲法を論じたものである。彼の理論は、個別利益集団意志の競合と同意のなかから一つの意志を導出しようとする「競合的多数制」にくくられ、連邦国家におけるそれの適用形態の一つが州主権論を軸とした「無効宣言」の理論である。1850年3月31日没。
[中谷義和]
『カルフーン著、中谷義和訳『政治論』(1977・未来社)』▽『中谷義和著『アメリカ南部危機の政治論――J・C・カルフーンの理論』(1979・御茶の水書房)』