グリーン・ニューディール(読み)ぐりーんにゅーでぃーる(英語表記)Green New Deal

翻訳|Green New Deal

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

グリーン・ニューディール
ぐりーんにゅーでぃーる
Green New Deal

環境分野への集中・大型投資で、地球温暖化防止と景気活性化の両立を目ざす政策。「グリーンディール」とよばれたり、英語の頭文字をとってGNDと略されたりする。大恐慌時にアメリカ大統領フランクリン・ルーズベルトが打ち出したニューディール政策になぞらえ、2008年のリーマン・ショック後にアメリカ大統領バラク・オバマが提唱した。太陽光や風力などの再生可能エネルギーの活用、将来有望なエコカー(環境対応車)の導入、公共交通システムの抜本的見直し、次世代送電網であるスマートグリッドの整備、温暖化に起因した大災害に備えたインフラ強靭(きょうじん)化などを財政支出と減税で進め、温暖化ガスの削減、成長率の押し上げ、新たな雇用(グリーン・ジョブ、アメリカで500万人)創出の同時達成を目ざす。しかし2017年、地球温暖化に懐疑的なドナルド・トランプが大統領につき、アメリカのグリーン・ニューディール頓挫(とんざ)した。

 リーマン・ショック後の世界同時不況から脱却するため、アメリカだけでなく、ドイツ、フランス、イギリス、中国、韓国などが2008年以降、類似のグリーン・ニューディール構想を打ち出した。ヨーロッパ連合は2019年、2050年までにヨーロッパの温暖化ガス排出ゼロを目ざすヨーロッパグリーンディール構想をまとめ、2030年までに総額1兆ユーロを投じることで合意した。中国は第十三次五か年計画(2016~2020年)に経済成長と環境対策を両立させる「緑色発展(グリーン・ニューディール)」構想を盛り込んだ。日本では2009年(平成21)、環境省が日本版グリーン・ニューディールとして「緑の経済と社会の変革」構想を発表した。グリーン・ニューディールは政権交代でその興廃が大きく左右される特色があり、アメリカでも2020年大統領選挙の民主党候補ジョー・バイデン(1942― )の政権構想に、再生エネルギー推進などのグリーン・ニューディールが盛り込まれている。

[矢野 武 2020年10月16日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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