日本大百科全書(ニッポニカ) 「グローバー石」の意味・わかりやすい解説
グローバー石
ぐろーばーせき
glauberite
ナトリウムとカルシウムの無水硫酸塩鉱物。岩塩鉱床のもっとも普通の随伴鉱物。自形は斜めに切れた菱柱(りょうちゅう)状。あるいは菱形(ひしがた)の輪郭をもった縦長の楔状(せつじょう/けつじょう)立体。蒸発岩の構成鉱物、乾燥気候地域で玄武岩などの空隙充填(くうげきじゅうてん)鉱物、火山噴気生成物などとして産するほか、乾燥気候地域に発達する堆積(たいせき)性硝酸塩鉱床の随伴鉱物として産する。日本では産出の報告例はない。
共存鉱物は岩塩、ポリハライトpolyhalite(化学式K2Ca2Mg[SO4]4・2H2O)、石膏(せっこう)、硬石膏、テナール石(ボウ硝)、ミラビル石mirabilite(Na2[SO4]・10H2O)、硼酸(ほうさん)石、硝石、チリ硝石、ブレーデ石blödite(Na2Mg[SO4]2・4H2O)など。同定は自形であれば、柱や楔状立体を斜めに切る劈開(へきかい)。他の可溶性塩類鉱物と区別しがたいが、粉末を水中に入れると、最初は透明であるが、部分的に溶解しながら、白色難溶の石膏を残す。
命名は、本鉱の主成分として含まれているNa2[SO4]が化合物名としてグローバー塩glauber's saltとよばれていたことによる。この名前はドイツの化学者ヨハン・ルドルフ・グローバーJohann Rudolf Glauber(1604―1668)にちなむ。
[加藤 昭]