ゲーリンクス(読み)げーりんくす(英語表記)Arnold Geulincx

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゲーリンクス」の意味・わかりやすい解説

ゲーリンクス
げーりんくす
Arnold Geulincx
(1624―1669)

オランダデカルト派を代表する哲学者。アントワープに生まれ、のちにオランダに移る。ルーバン大学に学び、デカルト哲学に傾倒する。母校ライデン大学の教授となるが、ペストに倒れた。デカルトの二元論心身問題にも徹底させようとして、機会原因論偶因論)を説き、心身の直接的因果作用を否定した。精神と身体の変化は、神の媒介によって引き起こされる。前者のなかに運動が現れると、これを「機会(オカジオ)」として神は後者にも対応する作用を引き起こすと考えた。これは神の支配の絶対性を強調することであり、そこから人間の無力自覚と神への服従が説かれた。デカルト哲学はこの倫理学説によって補われなければならないと、彼は考えたのである。

[香川知晶 2015年11月17日]

『桂寿一著『デカルト哲学とその発展』(1966・東京大学出版会)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ゲーリンクス」の意味・わかりやすい解説

ゲーリンクス
Geulincx, Arnold

[生]1624.1.31. アントワープ
[没]1669.11. ライデン
偶因論で知られるオランダのデカルト主義哲学者。ルーバン大学で哲学と神学を学び,のち教授となったが,1658年,ジャンセニズムの同調者という嫌疑をかけられて追われライデンに避難。忠実なデカルトの徒であったが,倫理学に深い関心をはらってアウグスチヌスの影響を受け,全能の超越的神への信仰が彼の偶因論哲学の源泉となった。それによると神は万象の唯一の原因であり,私の思惟や身体運動の作者は私ではなく神であり,肉体が思惟の機会因となるという。行為に関してはすべて神の意のままという決定論にいたるが,人間の自由を認めて罪と誤謬を神に帰することを避けるとともに,神への意志的従属を唯一の徳とした。主著"Tractatus ethicus primus" (1665) ,"Ethica" (65) ,"Physica vera" (88) ,"Metaphysica vera" (91) 。

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