サガリバナ(その他表記)Barringtonia racemosa(L.)Spreng.

改訂新版 世界大百科事典 「サガリバナ」の意味・わかりやすい解説

サガリバナ
Barringtonia racemosa(L.)Spreng.

サガリバナ科の常緑小高木で,アフリカ東岸部から東南アジア,太平洋地域にいたる広い範囲に分布し,北限は日本の奄美大島。ふつう海岸付近の低湿地,マングローブ背後の湿地または内陸の河川沿いの湿地に生育し,しばしば群生する。葉は長さ20~30cmの長楕円形~長倒卵形,小さい鈍鋸歯があり,枝先にかたまってつく。小枝は太く,葉痕が顕著。葉腋ようえき)から長さ50~70cmの総状または穂状の花序を下垂し,たくさんの花をつける。サガリバナの和名はこれに基づく。花は直径約3cmで,白から赤に変わり,多数のおしべがある。果実は長さ4~7cmのやや角ばった長楕円形で,軽い繊維質の外皮をもち,水に浮いて運ばれ繁殖する。同属のゴバンノアシ碁盤脚)B.asiatica(L.)Kurz.もマダガスカル,東南アジアから太平洋地域に広く分布し,琉球の西表(いりおもて)島にまで達する。海岸に生育する常緑中高木で,しばしば太い枝が砂浜を低くはう。果実が碁盤の脚に似て角ばっている。両種とも果実や樹皮をつきくだいて,魚毒として用いることで有名である。また果実や若芽食用にされるという記録がある。材は軽軟。ゴバンノアシの果実は漁網のうきに利用されるという。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サガリバナ」の意味・わかりやすい解説

サガリバナ(下り花)
サガリバナ
Barringtonia racemosa

サガリバナ科の常緑高木。東南アジアから太平洋諸島熱帯亜熱帯に分布し,河岸河口の泥地などにマングローブ林をつくる。日本では奄美大島以南の琉球列島自生がみられる。高さ3~10mになり,よく分枝する。葉は枝先に集って互生し,倒卵形で長さ 10~30cm,先端はとがり質は厚い。枝の下部は落葉痕が目立つ。夏に,葉腋から 20~60cmもの長い花穂を下垂し,白色またはピンクの花を多数つける。花は径約 3cm,4~5枚の花弁とはなはだ多数のおしべがある。ゴバンノアシ (碁盤の足)と同属であるが,花序が長く垂れ,果実は多角錐状にはならない。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「サガリバナ」の意味・わかりやすい解説

サガリバナ
さがりばな / 下り花
[学] Barringtonia racemosa (L.) Spreng.

サガリバナ科(APG分類:サガリバナ科)の中高木。葉は枝先に束生し、ほぼ無柄、倒卵状長楕円(ちょうだえん)形で長さ10~30センチメートル。縁(へり)は波状で、若葉は赤褐色を帯びる。総状花序は下垂して長さ約50センチメートルに達し、花は白ないし淡紅色。雄しべは多数、刷毛(はけ)状で長さ3~4センチメートル。果実は卵形で長さ約5センチメートル。マングローブ林の後背地や湿地に生え、奄美(あまみ)大島以南、および東南アジア、インドなど亜熱帯・熱帯地方に分布する。

[島袋敬一 2021年3月22日]

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