改訂新版 世界大百科事典 「サンカノゴイ」の意味・わかりやすい解説
サンカノゴイ (山家五位)
bittern
Botaurus stellaris
コウノトリ目サギ科の鳥。全長約75cm。ゴイサギよりひとまわり大きく,羽色は黄褐色で,全身に黒い縞や不規則な模様がある。ユーラシア大陸とアフリカに分布し,日本には冬鳥として渡来するが数は少ない。広いヨシ原にすんでいる。昼間はもっぱらヨシの中に隠れていて,夕方や夜間歩き回り,魚,カエル,大型昆虫類などを捕食する。もし昼間人が近づくと,くちばしを上に向け,くびをのばし,直立した姿勢でじっとしている。そうすると体の模様が周囲のヨシにとけ込み,発見を免れるわけである。体を外界の事物にまぎらわせて敵の目を逃れる方法を一般に擬態と呼び,いろいろな動物で見られるが,この鳥の擬態はその好例として名高い。巣はヨシの茎に枯茎などをからめてつくられ,1腹5~6個の卵を産む。繁殖期にはうなるような大声を出す。この大声もサンカノゴイ独特の習性の一つとして有名である。
執筆者:森岡 弘之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報