日本大百科全書(ニッポニカ) 「シャハト」の意味・わかりやすい解説
シャハト
しゃはと
(Horace Greely) Hjalmar Schacht
(1877―1970)
ドイツの金融財政家。北ドイツ生まれ。母はデンマーク系アメリカ人。ドレスデン銀行重役、ナチオナル銀行頭取などを経て、1923年ドイツ国通貨委員となりインフレを収めた(レンテンマルクの奇跡)。同年ライヒスバンク総裁に就任し、マルクの安定、財政健全化に努め、ワイマール共和制の定着に貢献した。しかし交渉団長となったヤング賠償案をめぐる意見の対立から、1930年総裁を辞任した。以後、右翼勢力の糾合を図り、ナチスを援助してヒトラー内閣の成立、ワイマール共和制の崩壊に寄与した。ヒトラーのもとでふたたびライヒスバンク総裁(1933)、経済相(1934)を兼ね、再軍備と失業克服のナチス経済政策を遂行したが、ゲーリングと対立して引退、1944~1945年反ナチ態度のゆえに拘禁された。ニュルンベルク裁判では無罪とされ、釈放後、銀行経営や発展途上国の財政顧問などで活躍した。20世紀有数の経済テクノクラートであった。
[福応 健]