日本大百科全書(ニッポニカ) 「シャミッソー」の意味・わかりやすい解説
シャミッソー
しゃみっそー
Adelbert von Chamisso
(1781―1838)
ドイツ・ロマン派の詩人、自然科学者。フランス名門貴族の出。シャンパーニュのボンクール城に生まれる。1790年、フランス革命で財産を没収された両親とともにベルリンに逃れる。プロシアの軍人を志し1801年少尉に任官。そのころからドイツ語で詩作を始め、ドイツの哲学、文学に傾倒。ベルリン在住のロマン派の若き詩人たち、フケー、ファルンハーゲンKarl August Varnhagen von Ense(1785―1858)らと文芸雑誌を刊行する。1806年ナポレオン軍によるプロシア敗退を体験、ドイツ詩人としての自覚と祖国フランスへの愛着の相克から軍役を退く。ドイツとフランスの間を往復、1812年パリで当時ドイツ文化の最大の理解者スタール夫人の知遇を得る。同年ベルリンに戻り、ベルリン大学で医学、植物学、生物学の研究に没頭し、1815年から3年間ロシアの学術探検隊に加わり世界旅行を体験、自然科学者としての基礎を築き、1819年ベルリンの王立植物研究所所長に迎えられる。叙情詩、バラードに詩才を示したが、1814年発表のメルヘン的な小説『ペーター・シュレミールの不思議な物語』は、ロマン主義的幻想と写実的筆致により世界的な名声を博した。
[中井千之]