ジュゴン(読み)じゅごん(英語表記)dugong

翻訳|dugong

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジュゴン」の意味・わかりやすい解説

ジュゴン
じゅごん / 儒艮
dugong
[学] Dugong dugon

哺乳(ほにゅう)綱海牛目ジュゴン科の海産動物。沖縄ではザンノイオ、アカンガイユともよばれる。インド洋、太平洋地域の浅海生息し、南西諸島は分布の北限である。体は紡錘形で、尾びれは鯨類と同じ三日月形をしており、後肢はなく、前肢はひれ状、この付け根に1対の乳頭がある。目は小さくその後方に耳孔があるが耳殻はない。最大は体長3メートル、体重400キログラムに達するが、通常は2.5メートル前後、250~300キログラムである。体色は青みがかった灰色から褐色がかった灰色と変化がある。大きく円盤状に発達した上唇はブタの鼻鏡を思わせ、上下の唇には洞毛という太い感覚毛が密生しており、よく動く唇と洞毛で餌(えさ)の植物の選別もし、また口中に取り込む。本種の鼻口部、顔つきはなんとも名状しがたいものである。白い細毛と太く短い洞毛が全身にまばらに生えている。1対の鼻孔は上唇の後上方についている。餌はヒルムシロ科トチカガミ科などの海産種子植物である。肉は美味で不老長寿の効果があると信じられていた。昔は沖縄に相当数のジュゴンがいて、八重山(やえやま)列島から琉球(りゅうきゅう)王に上納された。沖縄にはジュゴンにまつわる民謡民話が数多くある。人魚伝説モデルといわれているが、日本人魚の源は深海魚リュウグウノツカイとする説もある。ジュゴンは少数ながら現在でも沖縄諸島に生息が認められ、1982年(昭和57)3月に沖縄本島東海岸に死体が漂着している。国の天然記念物

[内田詮三]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジュゴン」の意味・わかりやすい解説

ジュゴン
Dugong dugon; dugong

カイギュウ目ジュゴン科ジュゴン属。最大体長は約 3.3m,最大体重は約 400kg。出生仔は体長1~1.5m,体重約 20kgである。体色は灰色を帯びた黒色で,腹部は淡色を呈する。幼獣は淡い乳白色である。体型は紡錘形。軟らかい鰭 (ひれ) 状の前肢とクジラ類のように後縁が切れ込んだ尾鰭を有する。鼻面が下方に伸びているために口吻が短く,口唇に剛毛が密集する。鼻孔は弁状で鼻面の上部に2個ある。皮膚はなめらかで短毛が散在する。門歯は上顎4本,下顎6本,犬歯は下顎にのみ2本,前臼歯と臼歯はそれぞれ上顎と下顎に各6本ずつあり,老成個体は前臼歯と臼歯が2~3本消失する。上下顎の門歯と下顎の犬歯は痕跡歯である。6頭以下の小群で行動する。潜水時間は8分程度。周年繁殖を行い妊娠期間は 13~14ヵ月で1産1仔。草食性でアマモ類を採食する。インド洋から太平洋西部の熱帯と亜熱帯海域沿岸に広く分布する。絶滅危惧種。人魚のモデルとも考えられている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

お手玉

世界各地で古くから行われている遊戯の一つ。日本では,小豆,米,じゅず玉などを小袋に詰め,5~7個の袋を組として,これらを連続して空中に投げ上げ,落さないように両手または片手で取りさばき,投げ玉の数や継...

お手玉の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android