日本大百科全書(ニッポニカ) 「新行動主義」の意味・わかりやすい解説
新行動主義
しんこうどうしゅぎ
Neo-behaviorism
行動主義のなかから生まれた新しい運動の総称で、1930年ごろから四半世紀にわたって学会をリードした立場。アメリカの行動理論behavior theoryのなかに広く浸透しているが、そのなかでも、スキナーの実験的行動分析experimental analysis of behaviorは、生きた研究活動として着目される。
[小川 隆]
新行動主義の特徴
初期行動主義が、(1)行動を小単位の刺激‐反応の関係として、また、刺激に依存した受動的活動として扱ったのに対し、環境に対する全体的反応を重視し、また、生活体の側からの能動的・目標指向的活動を扱う点、(2)なお、一部には刺激‐反応の関係を直接扱うのではなく、操作可能な環境条件と観察可能な反応との間に行動の法則化を目ざすための仮設的構成(仲介変数intervening variablesともいう)などを導入する点が、新行動主義の特徴となっている。
新行動主義は一つの学派ではなく(1)(2)についてそのなかにかなり違った見地が認められる。トールマンは行動の認知面を強調し、行動の生起する環境は生活体にとって、手段‐目標関係を含む記号体系(認知図cognitive map)を有しており、これが要求の事態で行動を発生させるという立場で、仲介変数として弁別体discriminanda、期待expectationなどの概念規定を扱った。また、ハルは、生活体の要求低減need reductionの法則の下に、習慣強度habit strengthから、行動の測定を直接規定する反応ポテンシャルexcitatory potentialに至る仲介変数の数量的体系化を試みた。
仲介変数の導入を行わない立場として、ガスリーは、刺激‐反応の同時存在が行動の最終反応と刺激との結合を強めるとする接近説contiguity theoryをとり、スキナーは反応‐強化の随伴contingencyが漸進的に行動を形成・維持することを強調する記述的立場をとっている。
[小川 隆]