翻訳|damask
紋織物の一種で,名称はシリアのダマスクスに由来し,西欧へはダマスクス方面から伝わったとされている。経糸(たていと)1種,緯糸(ぬきいと)(よこ糸)1種を用いた先染(染色した糸で織る)の織物で,地と文が対照的な異組織をなすため文様が浮きでて見える。本来のダマスクは繻子(しゆす)組織(繻子織)を含むものであるが,とくに同一組織の経面(経糸が多く現れる織面)と緯面(緯糸が多く現れる織面)を使ったものをさした。たとえば五枚繻子組織の経面を地に緯面を文としたもの,八枚繻子組織の経面を地に緯面を文としたものなどである。これらは光沢のある地から文が浮きでて見え,裏面は地と文の組織が逆で表裏両用の織物となっている。ダマスクを織る空引機(そらびきばた)は,紋綜絖および引上げ綜絖と引下げ綜絖の装置を必要とする。ダマスクには地に繻子組織,文に斜文組織を用いたものや,別の色緯糸(絵緯)や縫取緯(ぬいとりぬき)などを加え文様を豪華にしたものもある。広義では地と文が対照的な異組織をなす織物,たとえば中国漢代の平地綾や正倉院宝物中の染織に多く見られるような綾地綾文綾なども西欧ではダマスクと呼んでいるが,これらは後染(製織後に染める)の単色織物でこれを織る織機の構造も異なり,本来のダマスクに先行する織法である。名物裂の一種で中国や日本で織られた緞子(どんす)は,技法上ダマスクと同義語で,〈どんす〉の語自体〈ダマスク〉の音に由来するものと思われ,中世・近世における染織の東西交流の一端がうかがわれる。
素材は絹が中心であるが,麻,綿,毛や交織によるものなどがあり,用途としては,家具,窓掛け,服地,表装地,テーブルクロス,ナプキンなどがあげられる。
執筆者:道明 三保子
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緞子(どんす)と同じ組織で、地と文様が表裏反対の組織からなる。つまり経朱子(たてじゅす)地に緯(よこ)朱子で文様を表したものと、緯朱子地に経朱子で文様を表すものがある。この組織は中国で完成され、東西へ技術が伝播(でんぱ)したとされている。日本へは天正(てんしょう)年間(1573~92)にもたらされた。西へ伝わったもののうち、シリアのダマスカスDamascusでつくられた麻による製品が優れていたため、これが一般的名称となった。絹、人絹、毛のものはカーテン、ドレス、寝具などに、綿、スフ、麻のものはテーブルクロス、ハンカチーフ、ナプキンなどに使われる。
[角山幸洋]
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