チェスター(読み)ちぇすたー(英語表記)Chester

翻訳|Chester

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「チェスター」の意味・わかりやすい解説

チェスター
Chester

イギリスイングランド中西部,チェシャーウェスト・チェスターの行政府所在地。リバプールの南南東約 25kmにあり,アイリッシュ海に注ぐディー川の下流部に臨む。ローマ時代にはデバ Devaと呼ばれ,ブリタニア西部軍団の主要な要塞があったところで,マーシア王国時代にも防衛拠点として利用された。ノルマン朝以降行政中心地となり,1176年最初の勅許状が与えられた。13~14世紀には港町として,おもにアイルランドとの交易できわめて繁栄したが,ディー川河口の三角江(エスチュアリー)がシルト堆積によって浅くなるにつれてしだいに衰退し,18世紀までにはこの地方の主要港としての地位をリバプールに譲った。商業中心地で,各種軽工業が立地する。中世の香り漂う町並みに加えて,ローマ時代の防壁や石造の円形劇場跡,16世紀創建の大聖堂などの歴史的建造物も多数保存されており,観光業も盛ん。面積 448km2都市圏人口 8万121(2001)。

チェスター(伯家)
チェスター[はくけ]
Chester, Earls of

イギリス中世の貴族家柄ウィリアム1世が 1071年アブランシュのヒュー (1047頃~1101) をチェスター伯に封じたのが最初で,ヒューはノルマン朝の有力諸侯に数えられ,その領地チェシャーは王権に対する不入権を確保しパラティネイト (伯領州) と呼ばれる高級特権領の性格を与えられた。ヒューの子孫ヒュー・ド・ケベリオックは 1173年ヘンリー2世に対する反乱に加わった。彼の子ラヌルフ・ド・ブランデビル (72頃~1232) のとき同家の所領は最大となったが,彼が没すると所領は一族間に分割され,1246年までにチェスター伯領は王領に回収された。 54年エドワード1世皇太子のとき同伯領を与えられ,1399年以降皇太子によって領されることになった。

チェスター
Chester

アメリカ合衆国ペンシルバニア州南東部の工業都市。ニュージャージー州境に近く,デラウェア川に面する。フィラデルフィア南西 25km,その大都市圏に属する。同州最古の集落の一つで,地名は 1682年にこの地に上陸した W.ペンが友人のチェスター卿にちなんで名づけた。 1866年市制。おもな産業は造船鉄鋼化学製紙など。ジョン・ローチ社はアメリカ合衆国第一級の造船会社。 1960年代後半に人種問題が起った。ペンシルバニア陸軍大学,ペン・モートン大学などがあり,また初期のイギリス型家屋が残っている。人口4万 1856 (1990) 。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「チェスター」の意味・わかりやすい解説

チェスター(イギリス)
ちぇすたー
Chester

イギリス、イングランド北西部、チェシャー県の県都。リバプールの南約25キロメートル、ディー川の下流部に位置する。人口11万8207(2001)。ローマ軍の駐屯地起源とする古い町で、その遺跡がある。また中世の町並みがよく保存されていることで知られ、市壁に囲まれた旧市内には多くの史跡や歴史的建造物が残る。イギリス最大規模のローマ劇場跡、10世紀に補強築造された市壁、14世紀のおもかげをとどめるロウズRowsとよばれる2階建てアーケード街、10~11世紀起源の大聖堂などが主要な建造物。これらを目的に内外から訪れる人が多く、観光業は経済的に重要性をもつ。グロスビーナー博物館には、当地の古代、中世の資料が豊富である。電気部品、塗料など若干の工業もある。

[久保田武]



チェスター(アメリカ合衆国)
ちぇすたー
Chester

アメリカ合衆国、ペンシルベニア州南東部の都市。フィラデルフィアの南西20キロメートルに位置する。人口3万6854(2000)。工業地帯の中の港都で、交易、積出し地。伝統をもつ造船業など多種工業も発達する。1682年ペンシルベニアの創立者ウィリアム・ペンのアメリカ最初の上陸地点で、同州最古の都市であるところから、17、18世紀の歴史的建造物も多い。

[作野和世]

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