改訂新版 世界大百科事典 「ツルモドキ」の意味・わかりやすい解説
ツルモドキ (擬鶴)
limpkin
Aramus guarauna
ツル目ツルモドキ科Aramidaeの鳥。この鳥はツル科とクイナ科の両方の解剖学的特徴をもち,1種で独立の科を構成している。全長約65cm。くちばし,くび,脚が長く,体型はほっそりしている。羽色は全体にオリーブ褐色で,頸部(けいぶ)には濃褐色の縦斑がよく目だつ。くちばしは黄褐色で,少し下方に曲がっている。長い脚とあしゆびは灰色。あしゆびには水かきはないが,泳ぐのはじょうずである。
アメリカ合衆国のジョージア州,フロリダ州から西インド諸島および熱帯南アメリカまで分布し,低地の湿地に生息する。よく茂った草や灌木などの多い水辺を好み,水辺をゆっくり歩きながらさまざまな小動物をとって食べる。とくに巻貝が好物で,水中から貝類をくわえ出し,とがったくちばしで貝類の軟体部を引き出して食べる独特の習性がある。一般には夜行性で,日中は明るい水辺にはあまり出てこないが,管理のよいアメリカの鳥類保護区に生息しているツルモドキは日中も夜間も活動している。巣は水辺に近い地上か低い樹上につくり,1腹4~8個の卵を産む。孵化(ふか)直後の雛は濃褐色の綿羽におおわれていて,数日後には親鳥に導かれて巣を離れる。しかし,その後少なくとも数週間親鳥といっしょに生活する。英名はゆっくり進むものの意味で,この鳥の動作の特徴からつけられたものである。
執筆者:安部 直哉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報