鳥綱ディアトリマ目ディアトリマ科に属する化石鳥の総称。この科Diatrymidaeはディアトリマ属Diatrymaの4種よりなる。そのうちの1種は、ほとんど完全な骨格が北アメリカの第三紀初期の地層から発掘された。頭高約2メートル、大きな足をもった巨大な鳥で、体はヒクイドリに似ていたと思われるが、足指は4本あった。ディアトリマの最大の特徴は、体と不つり合いに大きな頭骨と嘴(くちばし)で、嘴を含めた頭骨の全長は48センチメートル、嘴は長さ22.5センチメートル、嘴高(しこう)16.5センチメートルに及ぶ。この鳥がすんでいたのは、いまから6500万~5500万年前(第三紀の始新世のころ)と推定され、化石が北アメリカ、ドイツ、フランスで発見されている。その生態については形態から推定するほかないが、地上生で、明らかに飛ぶことはできなかった。多くの人は、ディアトリマの巨大な嘴は肉食のためであったと考えている。しかし、一部の学者は、ディアトリマとオウムの嘴が比較的よく似ていることから、ディアトリマは植物食で、堅い果実や芽をかみちぎって食べていたと想像している。とにかく、ディアトリマの繁栄していた時代は、ちょうど恐竜の時代が終わり、哺乳(ほにゅう)類はまだ比較的小形であったころで、この大きな鳥は怖いものなしに悠々と暮らしていたことであろう。ディアトリマの類縁関係ははっきりしていない。しかし、いちばん類縁がありそうなのは、南アメリカの第三紀中期から発見されるフォロルハコスPhororhacosである。この鳥はツル目ノガンモドキの仲間で、地上にすみ、ディアトリマのように巨大で飛ぶことはできず、頭と嘴も大きかった。ディアトリマもフォロルハコスも、子孫を残さずに絶滅した。
[森岡弘之]
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