精選版 日本国語大辞典「では」の解説
で‐は
[1]
[一] 打消の意を含む接続助詞「で」に、係助詞「は」の付いたもの。…なくては。
※竹取(9C末‐10C初)「深き心ざしを知らでは、あひがたしとなむ思ふ」
※平家(13C前)九「平家の侍どもといくさして死なんとこそおもひつれ共、此御きそくではそれもせんなし」
[三] 格助詞「で」に、係助詞「は」の付いたもの。…においては。…によっては。じゃ(あ)。
※平家(13C前)七「我等はさすが東国では皆、人にしられて名ある者でこそあれ」
[2] 〘接続〙 (「それでは」の略)
① 前の事柄を受け、その事をふまえた上で後の事柄が生ずることを示す。それなら。
※浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉三「遂に下宿と決心して宿所を出た。ではお勢の事は既にすっぱり思切ってゐるか、といふに」
② 別れ際のあいさつのことばなどの冒頭に用いる語。前の事柄と直接の関係はない。それでは。
※三四郎(1908)〈夏目漱石〉一「では御大事にと、女に挨拶をして元気よく出て行った」
③ 話題を転換するときに用いる語。前の事柄に対して区切りをつけて、挨拶を切り出したり、新たな話題に切り換えたりする。
※河童(1927)〈芥川龍之介〉一四「しかしそれ以上の説明はあなたには不必要に違ひありません。では五番目の龕の中を御覧下さい」
[補注](一)の用法で、(二)と(三)との境界は必ずしも明らかにはし難い。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報