軍中の陣立(じんだて)。戦闘のための陣の立て方・取り方、軍隊の設営、陣地の配列、陣の張り方、備えの配置などを含む。地形、敵の状況、味方の多少に応じて陣の形を異にし、分合(ぶんごう)・解結(かいけつ)・奇正(きせい)・虚実によって転化した。
古代中国の兵学思想がわが国に導入された奈良時代前後から、黄帝(こうてい)の兵井(へいせい)の法、諸葛孔明(しょかつこうめい)の八陣(はちじん)の法、孫子(そんし)の九地(きゆうち)戦法および結営(けつえい)法、李衛(りえい)の五行(ごぎょう)の陣法などが相次いで伝えられ、一部でその調習も行われた。平安~鎌倉時代には大江匡房(おおえのまさふさ)らによって知識人の間に「孫子」が流行し、陰陽・天文思想と結合して軍配(ぐんばい)の思想が成立した。こうして鎌倉末~南北朝時代に集団白兵戦が盛んになると、総大将を中心にして、鳥雲(ちょううん)、魚鱗(ぎょりん)、鱗懸(うろこがかり)、鶴翼(かくよく)、長蛇(ちょうだ)、偃月(えんげつ)、彎月(わんげつ)、周淵(しゅうえん)などの陣法がとられるようになった。戦国時代に入り、甲州武田氏は孔明の八陣図に擬した八陣法を考案し、車懸(くるまがかり)の戦法を得意とした。そして戦国末期、戦闘の地域や規模が拡大すると、行軍と陣押(じんおし)に有利な本陣(旗本備(はたもとぞなえ))を中核とする五手先(ごてさき)の体制や、さらには九軍制がとられるようになった。
[渡邉一郎]
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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