ニホンカワウソ(読み)にほんかわうそ(英語表記)Japanese otter

共同通信ニュース用語解説 「ニホンカワウソ」の解説

ニホンカワウソ

イタチ科の哺乳類で、かつては国内各地の川の流域海岸生息していた。体は細長く毛に覆われ、足に水かきがあるのが特徴。泳ぎが得意で、水中の魚やエビカニを食べる。毛皮目的の乱獲や河川汚染、護岸工事などで激減し、1979年の高知県須崎市での目撃例が最後とされてきた。環境省は2012年、生息を30年以上確認できないとして「絶滅した」と判断した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニホンカワウソ」の意味・わかりやすい解説

ニホンカワウソ
にほんかわうそ / 日本獺
Japanese otter
[学] Lutra lutra nippon
Lutra lutra whiteleyi

哺乳(ほにゅう)綱食肉目イタチ科の動物。かつて日本に広く生息したカワウソで、ヨーロッパやアフリカ北部からアジアまで分布するカワウソLutra lutra亜種とされている。明治の初期には日本各地に普通にみられたが、100年ほどの間にほとんど絶滅に近い状態にまで激減した。1970年代には、高知県須崎(すさき)市の新荘(しんじょう)川から愛媛・高知県境付近に至る四国南西部の海岸およびいくつかの河川が、唯一の確実な生息地域で、十数頭ないしは数十頭程度がそこに生息しているだけであった。日本のカワウソは、河川と海との間を往復もするが、むしろ海岸にいるもののほうが多いようである。主要な食物である魚、エビ、カニの量が、海のほうが多いことによるのかもしれない。1928年(昭和3)から捕獲が禁じられたが減少し続け、1965年(昭和40)には特別天然記念物に指定されたが、なお事情は好転しなかった。

[古屋義男]

 2012年(平成24)8月、環境省は、絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト(レッド・リスト)の見直しに伴い、ニホンカワウソがすでに絶滅しているとの判断を公表した。1979年を最後に生息記録がないなどの理由による。

[編集部]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ニホンカワウソ」の意味・わかりやすい解説

ニホンカワウソ
Lutra nippon; Japanese otter

食肉目イタチ科カワウソ亜科カワウソ属。頭胴長は 54~80cm。尾長は 35~56cm。体重は 5~11.5kg。全身に短毛が密生する。上面の毛色は濃い褐色で,やや薄茶色を帯び,下面の毛色は灰褐色で,淡い黄白色がかる。上唇と頬,喉部の側面は白色を呈する。ユーラシアカワウソよりも尾が長く,尾の長さが体長の 60~70%に達する。頭部は大きく,顔が長い。鼻鏡は大きく,上縁ははっきりとした W字型である。門歯は上顎と下顎に各 6本,犬歯は上顎と下顎に各 2本,前臼歯は上顎 8本,下顎 6本,臼歯は上顎 2本,下顎 4本である。日本全土に分布していたが,生息数および生息地は激減し,愛媛県と高知県でわずかに生息が伝えられているのみだった。愛媛県内の動物園で飼育例がある。1965年国の特別天然記念物に指定。2012年環境省のレッドリストで絶滅種に指定された。(→カワウソ

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