精選版 日本国語大辞典「にも」の解説
に‐も
① 場所・時・対象・比較の基準など、格助詞「に」の意味に、添加や許容などの「も」の意味が加わったもの。
※万葉(8C後)四・五三一「梓弓つまびく夜音の遠音爾毛(ニモ)君が御幸(みゆき)を聞かくし良しも」
② 尊敬の対象となる人物を主語として表わすことを避け、間接的に尊敬の意を表わす。…におかれても。
※宇津保(970‐999頃)嵯峨院「帝、春宮にもいとになく思す御笛の師なれば」
③ (推量の助動詞「む(ん)」「う」を受けて) 「…する時でも」「…うとしても」の意の仮定の逆接条件を表わす。「渡ろうにも橋がない」
※足利本仮名書き法華経(1330)二五「おほきなるひのあなに、をしおとされむにも、かのくはんをんを、ねんせんちからに、くはきやうへんして、いけとなりなむ」
④ 「…にも…れず」など、同じ動詞を重ねた形で、遂行できない躊躇(ちゅうちょ)のさまを表わすのに用いる。
※多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉前「折々名残惜しげに、傾く日影を見返っては、起つにも起たれぬ気色であったが」
[2] (断定の助動詞「なり」の連用形「に」に係助詞「も」の付いたもの) …でも。
※万葉(8C後)一五・三七二七「塵泥(ちりひぢ)の数爾母(ニモ)あらぬ我れ故に思ひわぶらむ妹がかなしさ」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報