絶対零度の極限におけるエントロピーの挙動について、1906年H・ネルンストが発見した定理。ネルンストは可逆電池を熱力学の立場から考察し、温度が絶対零度に近づくとき、エントロピーは有限値になることを示した。エントロピーに加わる任意定数は物理的な意味をもたないから、エントロピーの原点を適当に選び、前述の有限値を0と置くことができる。したがって「絶対零度ではエントロピーは0である」といえる。これをネルンストの熱定理という。この定理はまた熱力学の第三法則ともよばれる。
統計力学におけるボルツマンの原理によるとエントロピーSはS=kBlogWと表される。ここでkBはボルツマン定数、Wは指定されたエネルギーをもつ状態の数である。絶対零度では体系の量子力学的な基底状態が実現し、縮退がなければW=1でS=0の関係が必然的に導かれる。
[阿部龍蔵・宮下精二]
H.W. Nernst(ネルンスト)(1906年)により提出された熱力学上の定理であって,一つの化学変化に伴うギブズエネルギー変化(ΔG)の温度(T)による変化は,0 K に近づくに従って0に漸近する.すなわち,
というもの.この定理によれば,ギブズ-ヘルムホルツの式からわかるように,0 K に近づくに従ってΔGとエンタルピー変化ΔHはしだいに接近し,0 K では両者は等しくなる.また,エントロピー変化をΔSとすれば,
d(ΔG)/dT = -ΔS
の関係があるから,0 K における固体の化学変化に伴うエントロピー変化は0である.この定理は熱力学第三法則に発展させられた.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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