ノールズ(読み)のーるず(その他表記)William S. Knowles

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ノールズ」の意味・わかりやすい解説

ノールズ
のーるず
William S. Knowles
(1917―2012)

アメリカの有機化学者。マサチューセッツ州生まれ。ハーバード大学で化学を専攻して1939年に卒業。1942年コロンビア大学で博士号を取得。モンサント社の研究所の前身となるThomas and Hochwalt研究所にて医薬合成に関する研究に携わる。第二次世界大戦中には軍服防虫剤の合成や抗生物質の合成を行う。戦後ステロイド不斉合成を研究する。

 1968年に、遷移金属を用いた不斉触媒による水素化反応では、不斉性のない化合物から不斉化合物、すなわち二つある鏡像異性体のうち一方の鏡像体が過剰に含まれる生成物が得られることを発見した。この研究成果はすぐに工業的に実用化され、1974年にはパーキンソン病の治療薬として知られるL-DOPAの合成に用いられるようになった。1986年にモンサント社を退職。医薬品の合成においては、鏡像体間で活性が大きく違うこともあり、一方のみを効率よく合成できるこの研究成果は医薬の進歩に欠かせないものであった。この業績に対し、2001年のノーベル化学賞をK・B・シャープレス、日本の野依良治(のよりりょうじ)とともに受賞した。

[馬場錬成]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ノールズ」の意味・わかりやすい解説

ノールズ
Knowles, William S.

[生]1917.6.1. マサチューセッツ,タウントン
[没]2012.6.13. ミズーリ,チェスターフィールド
アメリカ合衆国の有機化学者。1939年ハーバード大学卒業,1942年にコロンビア大学で博士号取得後,オハイオ州デートンのトーマス・アンド・ホックワルト研究所(のちにモンサント合併)での研究生活に入った。1986年の退職までミズーリ州セントルイスのモンサントで研究員を努める。ダニ用殺虫剤の開発やハーバード大学のロバート・B.ウッドワードステロイド合成の研究などに従事したのち,構成する原子は同じであるが左右の向きが異なる物質(光学異性体)をつくり分ける研究に取り組んだ。1968年当時開発されたばかりの遷移金属ロジウム化合物触媒を使って有機物質の水素化反応を制御,左右をつくり分けることに成功,不斉合成反応の研究の草分けとなった。これは 1974年にパーキンソン症候群の治療薬 L-ドーパの合成に使われ,不斉合成反応の初の工業的応用となった。2001年キラル触媒による不斉水素化反応の開発で,野依良治,K.バリー・シャープレスとともにノーベル化学賞を受賞した。

ノールズ
Knollys (Knolles), Sir Robert

[生]?
[没]1407
イギリス騎士。 1351年ナイト爵を授けられ,59年百年戦争でガスコーニュに従軍して大功をあげ,67年エドワード (黒太子) に従いスペインに遠征。 70年フランス遠征軍指揮官。 81年 W.タイラーの乱の鎮圧に活躍。

ノールズ
Knowles, James Sheridan

[生]1784
[没]1862
アイルランド出身のイギリスの劇作家,俳優。作風はメロドラマ的。代表作は『せむし男』 The Hunchback (1832) 。

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