改訂新版 世界大百科事典 「バジーレ」の意味・わかりやすい解説
バジーレ
Gianbattista Basile
生没年:1575ころ-1632
イタリアの詩人,民話作家。ナポリに生まれ,幼少から詩才を現して,イタリア各地を放浪した。長じて生活のためにベネチア共和国の軍人(1604-07)となり,クレタ島の防衛に加わったり,ナポリやカラブリア地方で軍務(1608-12)に就いたりした。歌手として名をあげた妹の推挙で,1612-13年マントバのゴンザーガ家に仕え,宮廷人としても著名であった。個別に発表していたマリーノ風の技巧的な詩編をまとめて《作品集》(1613)を刊行したが,それよりも晩年にジャン・アレッシオ・アッバットゥーティスの筆名でナポリ方言を用いてつづった詩編《ナポリの美神》(1635)や,同じくナポリ方言で書いた《物語のなかの物語,すなわち幼い者たちの楽しみの場》(1634-36)のほうが,民衆文学,方言学,社会史などの側面から,重要な文献となった。とりわけ後者は,ボッカッチョの《デカメロン(十日物語)》にならい,5日50話を収める枠物語で,1674年版から《ペンタメロン(五日物語)》と称せられ,ストラパローラの《楽しき夜ごと》とともにヨーロッパで最も古い網羅的民話集となり,後世のペローやグリム兄弟に大きな影響を与えた。また1925年にクローチェが共通イタリア語訳を著してからは,バロック文学の傑作とも評価されるようになった。
執筆者:河島 英昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報