枠物語(読み)ワクモノガタリ

デジタル大辞泉 「枠物語」の意味・読み・例文・類語

わく‐ものがたり【枠物語】

《〈ドイツRahmenerzählung物語の中で、別の物語が語られる作品。多く、登場人物が、自身回想他者から聞いた話を語るという体裁をとる。「アラビアンナイト」「デカメロン」など。枠小説

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世界大百科事典 第2版 「枠物語」の意味・わかりやすい解説

わくものがたり【枠物語 frame story】

一つの物語の中に複数の物語を含む小説形式。複数の話者が次々と語る短編の集成として全編が構成されるものをさすが,話者が交替しない《千夜一夜物語》なども枠物語と呼ばれる。西洋では,この形式はルネサンス期の文学に多くみられ,口承文芸から文字文芸への移行や,俗語散文による小説の成立を示唆するものとして文学史上注目される。その典型的なものはボッカッチョの《デカメロン》で,ペストを避けて郊外別荘に落ちあった10人の男女が交替で司会役をつとめ,残りの9人が順次物語るという形式のもとに,教訓譚,ロマンス,滑稽譚,艶笑譚等々,多様な短編が集められている。

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世界大百科事典内の枠物語の言及

【イタリア文学】より

…このことから,後年,近代の文学史家デ・サンクティスは《デカメロン》を〈人曲〉と呼び,現代の研究家ブランカは〈十日百話〉の散文中に埋めこまれた夥しい11音節の韻律を取り出して,これを〈商人の叙事詩〉と名づけ,物語の基盤に〈愛〉〈運〉〈才〉があることを指摘した。 《デカメロン》は枠物語の形式をとり,個々の地の文章の枠のなかに,ペストの難を逃れて語りあう男女10人の〈小話〉が組み込まれている。このようなボッカッチョの手法は,一方にF.サッケッティ,M.バンデロ,G.B.ジラルディなどの短編物語の系譜を生みだし(後の2者の〈小話〉から想を得てシェークスピアが《ロミオとジュリエット》や《オセロー》を書いたことは周知のとおりである),他方にG.F.ストラパローラの《楽しき夜ごと》(1550‐53),G.バジーレの《ペンタメロン》(1634‐36)など,枠物語による民話文学を生みだした。…

※「枠物語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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