日本大百科全書(ニッポニカ) 「バッサーニ石」の意味・わかりやすい解説
バッサーニ石
ばっさーにせき
bassanite
人工的にはいわゆる焼き石膏(せっこう)として知られる化合物。バサニ石ともいう。イタリアのツァムボニーニFerruccio Zamboniniによって、1906年のベスビオ火山の噴火の際に得られた白榴(はくりゅう)石‐テフル岩leucite-tephriteの岩片の空隙(くうげき)中に確認されたのが最初であり、1910年に鉱物として記載された。通常の石膏あるいは合成Ca[SO4]・2H2Oは、空気中では70℃あるいはそれ以下の温度で、水中では98℃でこの水化物に脱水変化するが、塩化ナトリウムNaClあるいは塩化カルシウムCaCl2の存在で脱水温度は低下する。
原記載の産状のほかに、ベスビオ火山では噴気孔の周辺に産し、砂漠で蒸発乾固した塩類堆積(たいせき)物を主とする湖成堆積物中や洞窟(どうくつ)堆積物からも発見されている。日本では確実なものの報告はない。自形未報告。針状結晶あるいはその平行集合として産する。共存鉱物は、石膏、硬石膏、天青石、方解石、ギブス石、自然硫黄など。命名はナポリ大学古生物部門のフランチェスコ・バッサーニFrancesco Bassani教授(1853―1916)にちなむ。
[加藤 昭]