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明治末期の文芸懇談会。〈パン〉はギリシア神話に登場する半獣神パンPanで,享楽の神。1908年(明治41)末,雑誌《スバル》の詩人,北原白秋,木下杢太郎,長田秀雄,吉井勇らと,美術同人誌《方寸》に集まっていた画家,石井柏亭,山本鼎,森田恒友,倉田白羊らが,文学と美術との交流を図って興した会で,月に数回,隅田河畔の西洋料理店に集まり,美と酒との饗宴を繰り広げた。高村光太郎はやや遅れて参加,上田敏,永井荷風らの先達もときに参会し,耽美派のメッカの観を呈した。明治の耽美主義を特徴づける印象主義の手法や,都会趣味・江戸趣味の諸傾向はすべてこの会から生まれたものである。とくに10年秋の大会には《新思潮》《白樺》《三田文学》の同人から,音楽・演劇の関係者まで参集し,空前の盛会となった。しかし,以後しだいに放逸な酒宴の場となり,明治が終わるとともに消滅した。白秋の《東京景物詩》,杢太郎の《食後の唄》はこの会の記念的作品である。
執筆者:河村 政敏
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反自然主義を標榜(ひょうぼう)した青年文学者の集まりで、会の名のパンはギリシア神話の牧羊神Panからとったもの。1908年(明治41)12月、新詩社を脱退して『スバル』に拠(よ)った北原白秋(はくしゅう)、木下杢太郎(もくたろう)、高村光太郎(こうたろう)、吉井勇らに、石井柏亭(はくてい)ら青年画家を交えて第1回の会をもった。その主張は異国情緒・江戸情緒賛美の耽美(たんび)的傾向にあり、のちには第二次『新思潮』、『白樺(しらかば)』同人の参加などもあって反自然主義文学運動の一大集結の観を呈した。機関誌として発行された『屋上庭園』(1909~10)は発売禁止にあって2号で廃刊したが、会自体は明治末年まで続き、大正文学の一つの母体となった。
[田沢基久]
『野田宇太郎著『日本耽美派文学の誕生』(1975・河出書房新社)』
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…キリシタンや南蛮文化など,異国情緒豊かな水郷柳川の恵まれた環境で幼少期を過ごし,中学時代から《文庫》に短歌を投稿,やがて新詩社に入り,詩,短歌を発表して《明星》新人の筆頭となる。1908年,吉井勇,木下杢太郎らと新詩社を脱退してパンの会創立に参加,これは江戸情緒や異国趣味にひたって官能の解放を求める耽美派文学の拠点となった。09年,第1詩集《邪宗門》出版。…
※「パンの会」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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