日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビアンキ石」の意味・わかりやすい解説
ビアンキ石
びあんきせき
bianchite
亜鉛の含水硫酸塩鉱物の一つ。六水化物。ヘキサハイドライトhexahydrite(化学式Mg[SO4]・6H2O)系鉱物の一つ。自形は合成物についてb軸方向に伸びた針状のものが確認されている。天然のものは皮膜状をなす。ビアンキ石(Zn[SO4]・6H2O)に相当する化合物は70℃まで安定。他の亜鉛含水硫酸塩鉱物では、皓礬(こうばん)(硫酸亜鉛七水化物 Zn[SO4]・7H2O)が39℃まで安定、ガニング石gunningite(Zn[SO4]・H2O)に相当する化合物は250℃で脱水、無水の硫酸亜鉛は約740℃で分解する。ただ天然物は著量のFe2+(二価鉄)をZn2+(二価亜鉛)のかわりに含むため安定領域は上記とかならずしも一致しない。
典型的な鉱山活動後の鉱物post-mine mineralの一つといわれ、各種亜鉛鉱床の坑道の壁面に他の硫酸塩とともに着生する。日本では、宮城県栗原(くりはら)市細倉鉱山(閉山)の熱水鉱脈型亜鉛・鉛鉱床の坑道壁面上の着生物質中にみいだされた。共存鉱物としては、皓礬、緑礬(りょくばん)、石膏(せっこう)などがあるが、亜鉛の根源としては、水亜鉛土の存在が確認されている。同定は可溶性で室内で風解すること。他の硫酸塩と混在していると識別は困難である。FeOを副成分として含んだものは、含まないものよりわずかに黄色味を帯びるが、端成分に近いものではほとんど無~白色である。命名はイタリア、パドバ大学の鉱物学者アンジェロ・ビアンキAngelo Bianchi(1892―1970)にちなむ。
[加藤 昭 2018年7月20日]