フェヒナー(読み)ふぇひなー(英語表記)Gustav Theodor Fechner

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フェヒナー」の意味・わかりやすい解説

フェヒナー
ふぇひなー
Gustav Theodor Fechner
(1801―1887)

ドイツの学者。ライプツィヒ大学物理学教授、のち哲学教授。物理学、医学、心理学、哲学など広い領域にわたって業績を残した。心理学に初めて実験的方法を導入することにより精神物理学を創始し、心身平行説にたって身体と精神の間の量的関係を測定して、「フェヒナー法則」を提唱、感覚の強さは刺激の強さの対数に比例すると主張した。哲学者としては、スピノザカントシェリングに影響を受けて汎神(はんしん)論的ないし汎心論的な形而上(けいじじょう)学的統一的自然哲学を唱えた。機械的な原子の世界の根底に普遍的な精神的実体の働きを認め、万物は心をもっているが、宇宙の心が神の心であるから、万物はそれを分有して生きているとし、心の不滅を信じて死後の世界を認めた。また美の概念を心理的な経験からとらえ、美学を経験科学として確立し、哲学的な「上からの美学」に対する「下からの美学」である「実験美学」を主張した。

[千田義光]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フェヒナー」の意味・わかりやすい解説

フェヒナー
Fechner, Gustav Theodor

[生]1801.4.19. ゼールヘン
[没]1887.11.18. ライプチヒ
ドイツの科学者,哲学者,心理学者。ライプチヒ大学物理学,哲学教授。汎神論的傾向が強いが,同時に心身平行論の立場を取り,身体と精神との間の量的関係 (→フェヒナーの法則 ) を確立しようとした精神物理学の創始者。美学の領域でも,美を心理的な経験からとらえようとし,実験美学の祖といわれる。主著『精神物理学要綱』 Elemente der Psychophysik (1860) ,『実験美学』 Zur experimentellen Ästhetik (71) 。また『死後の世界』 Leben nach dem Todeもよく読まれている。 (→下からの美学 )

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