フェヒナー(読み)ふぇひなー(その他表記)Gustav Theodor Fechner

デジタル大辞泉 「フェヒナー」の意味・読み・例文・類語

フェヒナー(Gustav Theodor Fechner)

[1801~1887]ドイツ哲学者物理学者心理学者。ウェーバー法則から、感覚強度刺激対数に比例するという「フェヒナーの法則」を導き、実験心理学基礎となる精神物理学創始。著「精神物理学要義」など。フェヒネル。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「フェヒナー」の意味・読み・例文・類語

フェヒナー

  1. ( Gustav Theodor Fechner グスタフ=テオドール━ ) ドイツの物理学者、心理学者。刺激と感覚の強度との関係を量的に研究して精神物理学を創始し、「フェヒナーの法則」を立て、のちの実験心理学の祖となった。また、この方法を美学導入、心理学的実験美学を創始。主著「精神物理学要綱」。(一八〇一‐八七

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フェヒナー」の意味・わかりやすい解説

フェヒナー
ふぇひなー
Gustav Theodor Fechner
(1801―1887)

ドイツの学者。ライプツィヒ大学物理学教授、のち哲学教授。物理学、医学、心理学、哲学など広い領域にわたって業績を残した。心理学に初めて実験的方法を導入することにより精神物理学を創始し、心身平行説にたって身体と精神の間の量的関係を測定して、「フェヒナーの法則」を提唱、感覚の強さは刺激の強さの対数に比例すると主張した。哲学者としては、スピノザカントシェリングに影響を受けて汎神(はんしん)論的ないし汎心論的な形而上(けいじじょう)学的統一的自然哲学を唱えた。機械的な原子の世界の根底に普遍的な精神的実体の働きを認め、万物は心をもっているが、宇宙の心が神の心であるから、万物はそれを分有して生きているとし、心の不滅を信じて死後の世界を認めた。また美の概念を心理的な経験からとらえ、美学を経験科学として確立し、哲学的な「上からの美学」に対する「下からの美学」である「実験美学」を主張した。

[千田義光]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「フェヒナー」の意味・わかりやすい解説

フェヒナー
Gustav Theodor Fechner
生没年:1801-87

ドイツの物理学者,哲学者,心理学者。1834年ライプチヒ大学物理学教授,のち哲学教授。精神物理学の創始者,実験心理学の祖とされる。その哲学の立場は汎神論もしくは汎心論であり,精神と物質は同じ実在の二つの面であるとした。そしてこの哲学の科学的基礎づけとして物心間の数量的関係の実験的把握をめざしたものが精神物理学である。〈フェヒナーの法則〉を導出し,また精神物理学的測定法を創案し,さらには美を実験的,心理学的に理解しようとして〈実験美学experimentelle Ästhetik〉の研究をも試みた。万物に霊魂の存在を認める神秘主義者としても著名。主著に《精神物理学要綱》(1860),《美学入門》(1876),《昼の見方と夜の見方》(1879)などがある。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フェヒナー」の意味・わかりやすい解説

フェヒナー
Fechner, Gustav Theodor

[生]1801.4.19. ゼールヘン
[没]1887.11.18. ライプチヒ
ドイツの科学者,哲学者,心理学者。ライプチヒ大学物理学,哲学教授。汎神論的傾向が強いが,同時に心身平行論の立場を取り,身体と精神との間の量的関係 (→フェヒナーの法則 ) を確立しようとした精神物理学の創始者。美学の領域でも,美を心理的な経験からとらえようとし,実験美学の祖といわれる。主著『精神物理学要綱』 Elemente der Psychophysik (1860) ,『実験美学』 Zur experimentellen Ästhetik (71) 。また『死後の世界』 Leben nach dem Todeもよく読まれている。 (→下からの美学 )

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「フェヒナー」の意味・わかりやすい解説

フェヒナー

ドイツの哲学者,心理学者。ライプチヒ大学で初め物理学,のち哲学教授。哲学者としては汎心論的一元論の立場をとったが,心理学の領域では〈精神物理学〉を創始,感覚測定の方法を研究してフェヒナーの法則を立て,実験心理学の基礎を築いた。同様に〈実験美学〉の提唱者としても知られる。主著《精神物理学要綱》(1860年)ほか。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

367日誕生日大事典 「フェヒナー」の解説

フェヒナー

生年月日:1892年7月27日
ドイツの政治家
1973年没

出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のフェヒナーの言及

【心身平行論】より

…物的事象はあくまで他の物的事象とのみ,心的事象は他の心的事象とのみ因果連関をなし,両系列の間には相互作用はないとみなす。〈平行論Parallelismus〉という用語はフェヒナーのころから用いられたが,哲学史上,平行論の立場をとったのはまず17世紀の機会原因論者である。彼らは物心二元論に立ち,物心対応の真の原因を神に帰した。…

【心身問題】より

…その代表者であるデカルトも,身体と心の絡みの中心を松果腺としただけで,松果腺と心の絡みを説明できなかった。そこで,そのような作用はない,心と身体とは二つの時計のようにうまく調子がそろって平行しているのだ,というのがフェヒナーが平行論Parallelismusと名付けたものである(心身平行論)。その一変種として,主役である身体とくに脳の動きに心が随伴するという随伴説epiphenomenalismがある。…

【精神物理学】より

フェヒナーが1860年に《精神物理学要綱》において創始した学問体系であり,精神と身体,心と物の関係を実験や測定によって明らかにしようとするもの。フェヒナーの法則が導出され,また精神物理学的測定法として丁度可知差異法,当否法,平均誤差法などが創案された。…

【美学】より

… 科学的方法をとれば,美的価値は個々の美的体験や美的作品を離れて存在しないからには,美的原理の確立はこれら個別的なものから出立しなければならないとされる。この見地のもと従来の美学を〈上からの美学〉と決めつけ,経験分析の帰納的方法による〈下からの美学〉を唱えて新時代をひらいたのがフェヒナーであった。以後19世紀後半は実証主義尊重の思潮のなかで美学も科学的美学の姿をみせたといえる。…

※「フェヒナー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

仕事納

〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...

仕事納の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android