(読み)フ

デジタル大辞泉 「腐」の意味・読み・例文・類語

ふ【腐】[漢字項目]

常用漢字] [音](漢) [訓]くさる くされる くさらす
生物の組織などがいたんでだめになる。くさる。「腐朽腐臭腐食腐肉腐敗腐乱腐植土豆腐防腐
古くなって役に立たない。「腐儒陳腐
心をいためる。「腐心
男子を去勢する刑。「腐刑」

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精選版 日本国語大辞典 「腐」の意味・読み・例文・類語

くされ【腐】

  1. ( 動詞「くされる(腐)」の連用形の名詞化 )
  2. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. くさること。また、くさったもの。くさり。
      1. [初出の実例]「われと興がりわれと笑みて 知らじな腐敗(クサレ)の骨に入る」(出典:鉄幹子(1901)〈与謝野鉄幹〉晩翠を憶ふ)
    2. 気持が重いこと。くさくさしたり、くよくよしたりして気が進まないこと。気のくされ。
    3. ( 形動 ) いやな感じを与えるような関係や状況。男女間の情事にいう。
      1. [初出の実例]「地紙うりくされな文もことづかり」(出典:雑俳・柳多留‐二(1767))
    4. 運がおとろえること。身の不運。
      1. [初出の実例]「お品さんに死(なく)ならったのが不運(クサレ)だっけのさな」(出典:土(1910)〈長塚節〉二三)
    5. ( 「いっそのくされ」の形で ) 物事が思うままにならないので、やけを起こしたり、成りゆきにまかせたりすることにいう。
      1. [初出の実例]「いっそのくされくし巻で芝居也」(出典:雑俳・柳多留‐一七(1782))
    6. 月経。また、その期間。
      1. [初出の実例]「藪入はくされをぬいて願ふ也」(出典:雑俳・柳多留‐四(1769))
  3. [ 2 ] 〘 感動詞 〙 ( 「誓文(せいもん)くされ」などという場合の上を略したものから ) 口が腐っても断じてと誓う言葉。決して…しないと下に否定表現をとる場合が多い。くされくされ。
    1. [初出の実例]「なり平か行平でもあろふとおぼしめさんが、くされそうではござんせぬ」(出典:色茶屋頻卑顔(1698))
  4. [ 3 ] 〘 接頭語 〙 名詞の上に付けて、あざけりののしる意を添える。「くされ儒者」「くされ尼」「くされ俳諧
    1. [初出の実例]「其くされ入道をって用処は、言は活祖師心印は面前に現形したぞ」(出典:碧巖雷沢抄(1533)一)

くさり【腐】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 ( 動詞「くさる(腐)」の連用形の名詞化 )
    1. くさること。また、くさったもの。くされ。
      1. [初出の実例]「渋汁は、物のくさりをふせぐ効あるものにて」(出典:尋常小学読本(1887)〈文部省〉五)
    2. 物事が駄目になること。
      1. [初出の実例]「こんな者に身をまかせては一生の腐りと」(出典:当世商人気質(1886)〈饗庭篁村〉五)
    3. 気持が重いこと。くさくさしたり、くよくよしたりして気が進まないこと。
      1. [初出の実例]「すでに我が心の腐(クサ)りはしるく」(出典:やみ夜(1895)〈樋口一葉〉一〇)
  2. [ 2 ] 〘 接頭語 〙 名詞の上に付けて、あざけりののしる意を添える。「くさり女」「くさり金」など。
    1. [初出の実例]「我が様なすっかわきのくさり儒者の湯餠の腹をばえしらぬぞ」(出典:両足院本山谷抄(1500頃)一)

くた【腐】

  1. 〘 名詞 〙 屑。ちり。あくた。
    1. [初出の実例]「こゆるぎの渚に風の吹きしからくたも残さず波もよせけり」(出典:元真集(966頃か))

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普及版 字通 「腐」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 14画

[字音]
[字訓] くさる・ただれる・いためる

[説文解字]

[字形] 形声
声符は府(ふ)。〔説文四下に「爛(らん)なり」とあり、肉の腐爛することをいう。府はおそらく臓腑の腑の声義をとるもので、腐敗しやすい部分である。すべて腐敗・腐朽する意に用いる。

[訓義]
1. くさる、肉がくさる。
2. ただれる、くずれる、ほろびる。
3. いためる、心いためる。
4. 腐刑。
5. 豆腐。

[古辞書の訓]
名義抄〕腐 クツ 〔立〕腐 タダル・クツ・クダシ・ハダヘヤブル

[熟語]
腐衣・腐家腐瓦・腐・腐壊・腐気腐棄・腐朽・腐魚・腐局・腐刑・腐見・腐骨・腐財・腐罪腐索・腐史・腐・腐儒・腐臭・腐・腐心・腐身・腐生腐粟・腐俗・腐談腐忠・腐腸腐蠹腐套・腐肉・腐乳・腐敗・腐皮・腐夫腐敝・腐木・腐滅・腐・腐余・腐爛腐陋腐穢
[下接語]
腐・朽腐・枯腐・紅腐・臭腐・腸腐・陳腐・豆腐・乳腐・爛腐

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【茅盾】より

…抗日戦争中は,武漢,香港,ウルムチ,重慶,桂林などの各地を転々としながら文学活動を続けた。一女性の手記の形式で国民党の暗黒政治を内面から描いた長編《腐》(1942)で人間把握の深まりをみせ,それは翌年の《霜葉は二月の花より紅い》で円熟に達した。新中国成立後は,もっぱら文芸評論に健筆を振るい続けて後進の育成につとめるかたわら,作家協会主席,国務院文化部部長などの指導的地位にありつづけた。…

※「腐」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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