日本大百科全書(ニッポニカ) 「フランシウム」の意味・わかりやすい解説
フランシウム
ふらんしうむ
francium
周期表第1族に属し、もっとも重いアルカリ金属元素。周期表中、いわゆるエカセシウムとして、セシウムの下に位置すべき87番元素は、その性質が理論的に予測され、天然にもみいだそうという試みがいくつか行われた。たとえば、安定同位体を発見したとして、バージニウム、モルダビウムなどの名称が与えられたが、これらはのちに誤りとして否定されている。1939年に至り、フランスのペレイMarguerite Perey(1909―1975)は、アクチニウム227のα(アルファ)崩壊によって質量数223の87番元素が生成することを証明した。フランシウムの名は、発見者の生国にちなんだものである。
フランシウム223はβ(ベータ)崩壊性で、半減期21.8分。このほか17種の放射性同位体が人工的に得られているが、半減期はいずれも20分程度で、トレーサー量しか得られていない。化学的性質はセシウムと類似しているが、寿命が短いため、物理的性質の詳細は不明である。
[鳥居泰男]