翻訳|actinium
アクチノイドの最初に位置する放射性元素。原子番号89、元素記号Ac。1899年ピッチブレンドからウランを分離した希土類残留分中に発見され、光線、放射線を意味するギリシア語aktisにちなんで発見者であるフランスのドビエルヌAndré Debierne(1874―1949)によって命名された。
天然には、アクチニウム系列に属する質量数227の同位体がウラン鉱に少量含まれ、トリウム系列に属してメソトリウムⅡともよばれる質量数228がトリウム鉱に微量含まれている。質量数227(半減期21.8年)の同位体は人工的にもつくられ、これを利用して単体や化合物の性質が調べられている。単体は銀白色の金属。ランタンに似て化学的には酸化数+Ⅲで安定な化合物をつくる。
[岩本振武]
周期表第ⅢA族に属するアクチノイドの一つ。多くの同位体が知られているが,半減期の最も長いものは227Ac(21.6年)。1899年,フランスのドビエルヌAndré Debierneは,ピッチブレンドからウランを分離した残留物中に新しい放射性元素を発見し,〈光〉〈放射線〉を意味するギリシア語のaktinosまたはaktisにちなんで命名した。また1902年ドイツのギーゼルFriedrich Oskar Gieselが独立に発見したエマニウムemaniumは,のちにアクチニウムと同じものであることがわかった。天然には227Ac(アクチニウム系列)および228Ac(β崩壊,半減期6.13時間,トリウム系列)のみが存在するが,いずれもきわめて微量で,普通に取り扱えるほどの量はとり出されていない。原子炉中でのラジウムRaに対する中性子照射によってミリグラム量の227Acが得られている。単体は銀白色の金属で,湿った空気中では表面が容易に酸化される。希土類元素とくにランタンLaに似た性質をもち,溶液中では正3価のイオンが安定。
執筆者:中原 勝儼
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
Ac.原子番号89の元素.電子配置[Rn]6d17s2の周期表3族アクチノイド元素.ギリシア語の“光線”を意味するακτινοσから名づけられた.1899年,A. Debierne,1902年,F. Gieselによりウラン鉱石中から独立に発見された.現在,知られている同位体核種は,206~236の範囲に核異性体を含めて35種.質量数227の核種がもっとも長寿命で半減期21.77 y.主としてβ崩壊して227Thになる.天然には,この核種が235Uからはじまるアクチニウム系列の中間に存在する.トリウム系列中にも半減期6.15 h のβ崩壊核種228Acが存在する.単体は,フッ化物AcF3を1100 ℃ 以上の高温でLi蒸気で還元すると得られる.銀白色の金属.密度10.07 g mL-1.融点1050 ℃,沸点3200 ℃.第一イオン化エネルギー498.7 kJ mol-1(5.17 eV).化学的性質は希土類元素,とくにランタンに似るが,より塩基性である.酸化数3.[CAS 7440-34-8]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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