ラテン語で〈第一人者〉の意で,ローマ人の世界にあって最上位の序列にある人を指す。共和政期においては,国家の指導的人物を表し,そうした人々のなかの最高の者が元老院首席の地位にある者であった。彼らの権威は絶大で,その庇護を仰ぐ人々にとって,彼らは王者のごとき保護者であった。そこで,共和政末期の内乱の収拾にともなって収斂した権力の頂点に立ったアウグストゥスは,地中海世界全域の支配者たる自らの地位を表す言葉として〈プリンケプス〉を用いた。これは,共和政のたてまえを尊重して,〈権威においては万人を凌駕するも,同僚の官職保持者に優る権力をもっているわけではない〉ことを示す体裁であり,その地位がローマ世界の諸派閥を統合した最大の保護者,つまり事実上の皇帝たることに相違はない。この意味で,プリンケプスは〈元首〉であり,そこから,元首政(プリンキパトゥス)という国制史上の表現が用いられている。
→元首政
執筆者:本村 凌二
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ラテン語で「第一人者」「第一の市民」などの意。ローマ帝政時代には皇帝がこの名で呼ばれた。日本ではしばしば「元首」と訳され,その政体は元首政(プリンキパトゥス)と呼ばれる。
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…しかしこの三つの関係は必ずしも画一的でなく,ローマに近い南西部にあっては,キウィタスはおおむね小邦であり,キウィタスとパグスの領域が合致するもの,あるいはパグスとフンデルトシャフトとが合致するケースもまれではなかった。これはパグスが元来首長princepsまたは小王Gaukönigの統治領域の概念であるのに反し,フンデルトシャフトが兵制および裁判の必要にもとづく人的団体と考えられたからであって,三つの団体を単純に上下の行政区分とみるのは誤りである。またフンデルトシャフトの規模は,のちに密集村落となる数個または十数個の部落から成り立っているのが一般であった。…
…ローマ皇帝アウグストゥスによって確立されたプリンケプス(〈元首〉あるいは〈第一人者〉)の統治体制(プリンキパトゥス)を意味する用語。共和政末期の内乱を収拾して国家最大の勢力家となったアウグストゥスは,養父カエサルの独裁政樹立の挫折を考慮して共和政の国制に手を加えず,〈余は権威においては万人に勝りしも,公職にある同僚たちを凌ぐ権力を持たず〉と言明し,〈ローマ市民の第一人者〉と呼ばれた。…
…同年元老院は彼に〈アウグストゥス〉の尊称を与えた。彼自身は自らの地位をプリンケプス(〈第一人者〉)と呼んだ(そのため彼の始めた国制をプリンキパトゥスと呼び元首政と訳される)が,このような彼の地位は〈皇帝〉の名にふさわしいので,われわれは彼を皇帝と呼び,ここにローマは帝政期に入ったとみるのである。 一般的には共和政期の官制がそのまま続いたが,彼の周囲には皇帝顧問会(コンシリウム・プリンキピスconsilium principis)が置かれ,新たに親衛隊長(プラエフェクトゥス・プラエトリオpraefectus praetorio)などの官職がつくられた。…
※「プリンケプス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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