Pa.原子番号91の元素,電子配置[Rn]5f 26d17s2の周期表3族アクチノイド元素.原子量231.03588(2).天然には 231Pa が存在する.質量数212~240の同位体核種が知られている.231Pa はアクチニウム系崩壊系列に属する(半減期3.276×104 y,α崩壊).ウラン系崩壊系列には 234Pa(UZ,半減期6.70 h,β- 崩壊)と 234mPa(UX2,半減期1.175 min,β- 崩壊,準安定状態)があり,いずれもウラン鉱物中に存在する.1913年にK. FajansとO.H. Göhringが 234Pa(UX2)を発見,寿命の短いところからラテン語の“短い”brevisをとってbreviumと名づけた.長寿命の 231Pa は1917年にO. Hahn(ハーン),L. Meitner(マイトナー),独立にFajans,さらにF. Soddy(ソディ)らによってピッチブレンド中に発見された.α崩壊によりアクチニウムになるので,その前という意味で,ギリシア語の“最初”πρωτο(protos)からプロトアクチニウム(protoactinium)と名づけられたが,1949年にIUPACにより現在のprotactiniumに短縮された.1937年にA. GrosseがPa2O5をヨウ化物PaI5にかえ,真空中で,電流を通じて高温にしたフィラメント上で熱分解してはじめて金属を得た.単体は銀灰色金属で,正方晶のα相と1167 ℃ 以上で体心立方格子のβ相の二相がある.密度15.37 g cm-3(25 ℃,計算値).融点1840 ℃.酸化数3,4,5.空気中ではかなり安定で酸化されにくい.1100 ℃ 以上で酸素と反応してPaⅤ2O5(無色)を生じる.黒色のPaⅣ O2も存在する.PaO2とH2-HF混合系の反応でPaF4(褐色)が得られる.ハロゲン化物には,ほかにPaF5,PaCl4,PaCl5,PaBr5,PaI4,PaI5などがある.水溶液中で容易に加水分解してコロイド状になる.[CAS 7440-13-3]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
周期表第ⅢA族に属するアクチノイド元素の一つ。1918年ドイツのO.ハーンら,およびこれと独立にイギリスのF.ソディらはピッチブレンド中から分離することに成功した。このとき分離したものは長寿命(半減期3×104年)の231Paで,227Acの親にあたるものであり,アクチニウムに先立つ元素という意味で命名された。これに対し,同位体の234mPaは,短寿命でUX2と呼ばれ,すでに1913年ファヤンスK.Fajansによって見いだされていたが,半減期が1.18分と短いために,91番元素であると確認されていなかった。質量数225~235および237が知られており,いずれも放射性である。天然には231Pa(アクチニウム系列),234mPa(ウラン系列),234Pa(ウラン系列)の三つがあり,231Pa以外は短寿命。ウラン鉱物中に存在するが,231Paの存在量はきわめてわずかで107分の1にすぎず,ほとんど分離はむずかしい。コンゴ産のウラン鉱抽出残渣60tから12段階の工程をへてプロトアクチニウム約125gが分離されたことがある。灰色金属で,展性があり,硬さはウランと同じ程度。空気中ではかなり安定であるが,ゆっくりと表面が酸化される。水素とは250℃で水素化物をつくる。ヨウ素とはヨウ化物をつくる。5価が普通で,4価の化合物もある。金属はハロゲン化物を高真空中で熱分解するか,フッ化物をバリウムで還元してつくられる。
執筆者:中原 勝儼
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
アクチノイドに属する放射性元素の一つ。原子番号91、元素記号Pa。天然にはウラン・ラジウム系列およびアクチニウム系列中にごくわずかに存在し、1913年から1918年にかけて発見と確認が続けられ、α(アルファ)崩壊でアクチニウムに変わることからプロトアクチニウムと命名された。アクチニウム系列中の質量数231同位体の約3万年を除くと、その後人工合成されたものも含め、いずれも半減期は短い。ウラン鉱物中に含まれるが、その化学的挙動は複雑である。単体は灰色の金属で展性に富み、化合物では5価または4価の陽イオンとなることが多い。質量数233の同位体は、天然のトリウムから核燃料となるウラン233を得る際の重要な中間体となる。
[岩本振武]
プロトアクチニウム
元素記号 Pa
原子番号 91
原子量 231.03588
融点 1840℃
沸点 ―
密度 15.37g/cm3(計算値)
結晶系 正方
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