ベタフォ石(読み)べたふぉせき(英語表記)betafite

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベタフォ石」の意味・わかりやすい解説

ベタフォ石
べたふぉせき
betafite

酸化鉱物複酸化鉱物パイロクロア系鉱物の一つで、ウランを主成分とし、放射能鉱物の一つに数えられる。パイロクロア系鉱物は、通常の連続固溶系を形成する鉱物の場合と異なった命名基準が適用されており、(U,Ca)1-x(Nb,Ti)2(O,OH)7で最初の括弧(かっこ)内でモル比にしてUが20%以上、第二の括弧内で2Ti(Nb+Ta)という関係が満足されるという定義である。

 花崗岩質ペグマタイト中に産する。ごくわずかではあるがカーボナタイト中からの報告もある。日本では福島県からの産出の報告はあるが、化学的な検討結果が十分でなく、現在は疑問視されている。自形は正八面体を基調とするが、a軸方向や[111]方向に伸びた直方体あるいは六角柱状となるものもある。共存鉱物は花崗岩質ペグマタイト中では、石英微斜長石黒雲母磁鉄鉱ジルコン、褐簾(かつれん)石、チタン石、トール石など。同定は形態、放射能の存在など。命名は原産地であるマダガスカルのベタフォBetafoにちなむ。

加藤 昭]


ベタフォ石(データノート)
べたふぉせきでーたのーと

ベタフォ石
英名betafite
化学式(U,Ca)1-x(Nb,Ti)2(O,OH)7
少量成分Na, K, Mg, Al, Fe, Th, Ca, ΣY, ΣCe, Sn, Ta, F
結晶系等軸
硬度3~5.5。分解の程度によって著しい差がある。
比重3.7~4.9。分解の程度によって著しい差がある。
暗褐、帯緑褐、赤褐、暗灰。分解すると表面から淡黄白色に変化する。
光沢ろう状、脂肪あるいは金剛。色の濃いものは亜金属。
条痕淡灰褐。分解が進んだものはほとんど白。
劈開無(「劈開」の項目参照

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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