日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベータフェルグソン石」の意味・わかりやすい解説
ベータフェルグソン石
べーたふぇるぐそんせき
β-fergusonite-(Y)
イットリウムとニオブの複酸化物。フェルグソン石と同質異像関係にあり、その高温型に相当する。ベータフェルグソン石群を構成し、その構成物には、(1)希土類元素のイットリウムが最多量を占めるもの、β(ベータ)-fergusonite-(Y)(イットリウムベータフェルグソン石)、(2)希土類元素のセリウムが最多量を占めるもの、β-fergusonite-(Ce)(セリウムベータフェルグソン石)、(3)希土類元素のネオジムが最多量を占めるもの、β-fergusonite-(Nd)(ネオジムベータフェルグソン石)、の3種がある。これらはもちろん同構造である。自形は正方形に近い矩形(くけい)を与える断面をもった短柱状。
花崗岩(かこうがん)質ペグマタイト中に産する。日本では福島県福島市烏川(からすがわ)鉱山(閉山)から産する。共存鉱物は石英、微斜長石、ジルコン、緑泥石など。同定はフェルグソン石よりずっと淡い黄灰色による。メタミクト状態(鉱物自体のもつ放射能によって非晶質化すること)になっていないものは案外硬度が高い。通常のフェルグソン石と比較すると、放射性元素の含有量が低い傾向にあるためか、メタミクト状態にあっても結晶度の低下の度合いは小さい。命名はフェルグソン石との同質異像関係にあることによる。ただし、同質異像関係が確認されているのは合成YNbO4についてであって、本来のフェルグソン石と比べると、ベータフェルグソン石のほうがはるかに理想式に近い。
[加藤 昭 2018年7月20日]